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[鹿角の演芸・民俗芸能]

 
川原大神楽「川原万歳」
 
△前文その三
 
 太夫 とうくんのせいとう、我また天下にあまねく武士は、光栄をたな心として、弓 は袋に収まりて、太刀は鞘を出でずして、とささのみよとかやかほどめでたき折からに、 ごさいの才三一曲囃してまいろ。
 
 才三 オウー、オウトセー武士は巧名、世は情け、オランダ、南京我が京まで響き渡 ったこの才三。太夫様の御用とあらば、取るものも取りあえず、食うものも食いあわせ ず、ちょうどお前の前に、ブラリ、ヤラリとお目玉にぶら下がってそうろう。
 
 太夫 それは、お前の前にかしこまってそうろう。
 
 才三 なるほど、お前の前にかしこまってそうろう。
 
 太夫 こら才三、常のそそうと違うてねんも早かった。
 
 才三 そうそらそうもございましょう。
 
 太夫 その方を呼び出したるはべつげいにあらず、ご当所は御祭礼につき、当家万歳 お好みとあり、万歳に通りては、八ツ力、神力、ごもん力、ちょうと上り下りやろうな いしというて、表六番、裏六番、合わせて十二番の万歳何万歳がよかろうかナ。
 
 才三 いやいや、太夫さん。このぬぐみになし、十二番もなもやったもんなら、腰も なもぶっつまぬけてしまうべし。
 
 太夫 十二番をするのではない。十二番のうちのめでたいのを一番だ。
 
 才三 さぁ、たった一番がし。とてもできませんナ。
 
 太夫 どうして。
 
 才三 できない証拠には、ないというてむこうへいって、半番つかかりました。しゅ うどやまへの悲しみコに、もう半番、もう半番、ついに一番なりました。
 
 太夫 太夫の半番あやまった。万歳もあらあら成就つかまつり、四方に霞ととうとめ て、何か珍しい話はないかナ。
 
 才三 さぁ、この頃忙しくて、旅もかげれねぇで、さっぱり珍しい話コ忘れましたナ。
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