[鹿角を詠んだ詩歌・文芸] |
△菅江真澄が詠んだ歌 一、 土深井 よしさはれみぬさとらまし人ことに こやとふかひもなにのみやしろ 紀の国坂(末広) いづれをかかづの郡の名もしるく おじかあらそふ秋の山かげ つれなしと待やわぶらん角つきて 雄鹿つまとふわざもわすれて 毛布の渡(神田) 萩の葉の音せぬ夜半も身にぞしむ たびねの床に通ふ秋かせ 夢にさへふる里人にあひがたき けふの渡に袖ぬれにけり 錦木塚 しら露のおくの細みち物うしと はらひし草や今もむすばじ 錦木の朽ちしむかしをおもい出て 細布の胸あはざりしいにしへを とへばはたおる虫ぞ鳴くなる 涙川 おほ空にわたる 鉄砲村(鶴田新田) 羽よはきつる田のひなは心せよ 鉄砲村の近くありつゝ 花輪の里 野に出てひかしこ(東こ)にしこ(西こ)ほりためて 染めるとぞ聞くかづのむらさき たけくまにあらぬ花回の松かげも ひとり行く身のたつきとぞなる 大里 昨日来てけふの細布たちさらば むねあひがたき別れならまし 小豆沢・夜明島 入逢のかねの音する山かげも 島は夜明の名に聞えぬる 湯瀬 麻糸の長きよるよるをとめらが 語るまどゐや楽しかるらん ふる郷をおもい出湯の山ちかく わきて物うき棹鹿の声 二、 米代川(花輪) 時もいま咲や花輪の花かすみ 霞へたてて見ゆる一さと 三、 追子坂(西道口) うくひすに来てもあはなてほとゝきす 汝かちゝはゝは老て鳴く也 鳥越の里 門のとにうはらあしなはひきはへて えやはゑやみの神や入べき ねぐらとふ秋のむら鳥越へ渡る 羽風にはるゝ峰のうす霧 さちいのる 七瀧明神(藤原) 春はさぞおちも寄りなんいやたかき 花の藤原はなのたきなみ 生しげる山のふぢはらいはがねに まつはりかゝる滝のしら糸 十和田湖(休屋) 雪と見し桂の林紅葉して 月も色ある山にすむらし 銚子の瀑布(中滝) いはがねのとゞろくばかりわきかへり 雪か雲かとかゝる滝なみ 三宝荒神の祠(白沢) 里の名のおふぎたたむと山幾重 いろどり渡る秋の川波 折戸(大湯) 男鹿なく柴の折戸も紅葉して そこととわれんあきの山里
参考:鹿角菅江真澄研究会発行「菅江真澄と鹿角」ほか
リンク:菅江真澄 リンク(再掲):歌枕のくに リンク(再掲):鹿角物語 |
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