7502蛙と娘の昔ッコ
 
                       参考:鹿角市発行「十和田の民俗」
 
 昔、昔ある所に、とっても綺麗な娘さんが居ました。ある日のこと、両親が『殿様の
処へ呉れてやることにした……』と言っているのを、障子の陰で聞いてしまった娘は、
びっくりし、殿様の処へ行くのがいやで、川伝いにずっと上り、山奥へ逃げて行きまし
た。
 
 その途中、蛙が蛇に呑まれるところへ、ばったり行き会ってしまいました。娘は、蛙
を可哀相に思って、助けてやりました。蛙はとても喜び、娘に礼を言いました。そうし
たら間もなく蛙は、お婆さんの姿になって現れ、娘の前にあった石の上に座り、
「お前は、若くて綺麗な娘なので、こんな山奥の道を一人で歩くのは不用人だから、俺
の姿を呉れてやる」
と言いました。娘はそのときから、蛙の呉れたお婆さんの姿になりました。蛙は、
「ここからずっと奥の方へ行くと、人を一杯使っている立派なお屋敷があるから、そこ
へ行って、お世話になるように」
と言いました。
 
 娘は、蛙の呉れたお婆さんの姿になって、山の道をどんどん歩いて行きました。
 蛙の言った大きなお屋敷の前に立って、びっくりしてしまいました。一杯の人達が忙
しそうに働いていました。
「どうか、オレとこを使って下さい」
と言いました。
「こんな年寄りなら、何が出来るものか、だめだ、だめだ!」
と、言われました。
「まずまず、使ってみて下さい」
と頼み、やっと使って貰うことになりました。そうしたら、何でもよく働くので、みん
ながたまげてしまいました。
 
 あるとき、屋敷の人に、
「どうか、隙間のない部屋ッコを作って欲しい」
と頼み、作って貰いました。
 その部屋ッコは、夜になると、何時も灯りッコが点いていました。それを、若旦那は
とっても不思議に思って、昼間にみんなが働きに出ている間に、そっとその部屋ッコへ
行って、鑿ノミで小さな穴ッコを空けておきました。
 
 夜になってから若旦那は、そっとすき見してみたら、花のように綺麗な娘が居たので
した。
 若旦那は、嫁に貰いたいと言ったが、親はだめだと言いました。親に反対された若旦
那は、それでもあきらめきれず、とうとう嫁ッコにしました。風呂から上がってきた娘
は、ますます花のような、綺麗な娘になりました。
 それからは、若旦那は、自分の嫁ッコには、何にも苦労させず、大事にし、二人で幸
せに暮らしました。どっとはらぇ。(大湯)
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