67 化け太鼓
 
                 参考:鹿角市発行「陸中の国鹿角のむかしっこ」
 
 昔、あったのです。
 昔、ある処に爺ジイが屋根を葺フいて、婆バハは庭を掃いていたら、豆こを一粒見付けま
した。
「爺な、爺な、この豆っこを煎イって食ったら良いだろうか、種っこにしたら良いだろう
かなぁ」
と言ったら、爺は、
種っこにしたら、良いだろう」
と言いました。そうだったので便所の前に植えました。
 植えたら、芽っこが出て来たために、水っこを呉クれたり、じき(肥料)を呉れたりし
て、段々大きくなって、花が咲いて、一本の豆の茎クキに大した実っこが成りました。
 
 そうしたらある晩バンゲ、爺が便所へ行こうとしたら、ピーカリ、ピーカリって光るも
のがありました。「何があるだろう」と見に行ったところが狐が居た訳です。
「おや、この野郎」
と爺は捕まえて、ぶっ殺そうとしたところ、狐は、
「爺、ご免して呉れ。俺オレ今、恩を返す」
「何、恩を返すと云うのか」
「俺オレ、今太鼓に化けるのであるから、爺はそれを持って回って童ワラシ方に、叩タタかせ
て、銭ゼンこを貰モラえ」
と言いました。
 狐は、ころっと太鼓に化けて、爺はその太鼓を叩きました。
  ポンポンポンハァスッポロポンノポン
   ハァポンポン
 
 童達が沢山集まって来て、
「爺はいいものだな、俺にも貸せ」
と言うので、爺は童方に貸すと、その太鼓のことを、
  ポンポンポン
と叩きました。
「痛いではないか、この童さつさと叩け」
と言うとね、童達は、
「おかしな事を言う太鼓だ」
と言って、爺様に戻す訳です。また今度叩いて行くと、童達は、
「爺ジ、貸せ」
と来る訳です。また、叩けば、
「この童、さつさと叩け、痛い、痛い」
と言う訳です。童は今度は動転ドデンして、その太鼓のことをドーンと投げました。
そしたら、狐が、
  ギャーン ギャーン ギャーン
と泣いて、山へ帰ったけれども、爺へ恩返しした訳だそうです。
 どっとはらえ。

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