62 果てなしの話
 
                 参考:鹿角市発行「陸中の国鹿角のむかしっこ」
 
 昔、あったのです。
 昔、それ、馬鹿でも殿様は殿様でしたな。
 それで、何もかんも、何もかんも話っこを聞くのが好きな殿様が居てありました。殿
様は、
「俺オレに話を腹いっぱい教えた者には、褒美ホウビを望み任せてやる」
と、全国に触れフレを回しました。
 来る人、来る人から、幾ら聞いても殿様は話好きであるから、
「いや、面白い、もっと」
と言うのでした。
 そして、その話の種タネが切れそうになりました。
 
 一人の若者が、遠い処から来て、
「私が話をするが、望みに任せて、褒美を呉クれるのですか」
殿様は、面白いなと思って、
「あーよし、よし」
と言いました。若者は、話っこを始めました。
「ある処の国の城主ジョウシュだか、庄屋ショウヤだかの人の家に大きな池がありました。そし
て、その家の辺ホトリに、なおも大きい石がありました。その石の脇に大きな樫カシの木があ
りました。大きい、大きい、とても大きい木であったそうです。春になったら花、何処
ドコまでも、何処までも、ずーっと、花がいっぱい咲きました」
そうしたに殿様、
「うん、うん、うん」
と言いました。
「そんなに花が咲いたの、いや、さぞ綺麗キレイだったろう」
と殿様は大変喜びました。若者は、話っこを続けました。
 
「段々夏になって花が落ちました。そして、巡って、巡って秋になりました。そして、
それが満面マンメンに実が成りました。成りも成ったり、花が咲いたから、実も成ったので
す。その実の数たるや浜辺の砂よりも、空の星よりも、まだまだ、まだまだ、いっぱい
ありました。そしたら、今度は木枯らしが吹いて、実が落ちました。風が吹けばポター
ントプリパターンと石に中アタって池に、チャポーン、カチンと鳴ればトポンと、風がフ
ーと吹けば、カチカチカチ、トポトポトポ、と」
 そこまで聞いているうちは、未だ殿様も、面白いと思っていました。
 さあ、明くる日も、明くる日も毎日、カチン、トポン、とやりました。それで殿様は、
「いいから、そのカチン、トポンは分かったから、その次はなんだ」
と言いました。若者は、
「いや、殿様待って下さい。未だ未だ、未だ未だ出るからよ、これが落ち果てるのは、
何時イツになるか、分からないからよ、私の息の続く限り、言いますので、一寸チョット待っ
て、言わないで下さい。カチン、トポン、嵐のときは、カチカチカチ、トポトポトポ、
カチカチカチ、トポトポトポ」
 毎日、毎日、毎日これを語りました。殿様は、
「いいって、いいって、それいいから、それだけは分かったから」
若者は、
「さて、殿様未だ未だ成っているもの」と言って、
「何しろ、砂よりも空の星よりも、成ったんだから、それ、一日二日一ケ月で落ちるも
のでない、未だ未だ成っているから、言わせて下さい」
と言って、カチン、トポン、カチン、トポン、と続けました。
 流石サスガの殿様も望み通り、褒美をやって、それから、懲コり懲りして話っこを聞かな
くなりました。
 どっとはらえ。

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