4101 カッコと後妻
参考:鹿角市発行「十和田の民俗」
昔あったのです。
エデ(父親)とアッパ(母親)とありました。そして、カッコと云うめんこい女童
オナゴワラシがありました。
カッコが六つになったとき、アッパは病気して死んでしまいました。エデは炭焼きで
あったために、アッパが居ないと、まま(ご飯)を炊いて呉れる人が居ないために、後
妻を貰いました。
ところが、ゴギアッパ(後妻)は、エデが居るときは、カッコをすごくめんこがった
けれども、エデが山へ稼ぎに行くと云うと、ゴギアッパは、
「カッコ、水を汲んでこい」
とか、
「カッコ、鍋を洗ってこい」
と、まるでいじめました。エデが帰ってくると、
「カッコ、今日はどうしていたか」
と言いました。カッコは、『今日はアッパにいじめられた』と云う話をしたいけれども、
我慢して、何にも言わないでいました。
そうしてまた、エデが山へ、春になったためにまた山に小屋を掛けて炭焼きに、毎日、
山の奥へ行って木を伐っていました。そうしたところ、今日も、
「カッコ、山へ行って、何か採ってきて呉れるからな」
と、このように言って山の奥へ出かけました。
家にカッコとゴギアッパと居たところ、段々暗くなったために、アッパが、
「カッコ、カッコ、鍋を洗ってこい」
と言ったために、両方の手に鍋を下げて、沼へ鍋を洗いに行きました。そして一生懸命
鍋を洗い終えたために、家へ帰ろうと見たところ、鍋の蓋フタがありませんでした。この
まま家に戻れば、どれだけアッパに怒られる(しかられる)かと思って、カッコは仕方
なく、泣いていたら、沼の中から先センのアッパが出て来て、
「行こう、こっちへ行こう、こっちへ行こう」
としゃべっていたために、そのまま、カッコは沼の中へ入って行きました。
晩方になったためにエデは、山から五月苺を一杯、蕗の葉ッコに採って、カッコに呉
れようと思って、急いで帰って来ました。そして、
「カッコ、カッコ、今来た。今日苺を採って来たよ」
と言いましたが、カッコが居ないために、
「アッパ、アッパ、カッコはどこへ行ったの」
と言いました。そしたらアッパは、
「先程、鍋を洗いに行ったよ、そこいらに居たようだ」
と言ったために、エデは、大急ぎで沼の所まで行ったところが、カッコの赤い緒の下駄
ッコばかりあって、カッコは見えませんでした。エデは、何もかも仕方がなくなって、
「カッコやーえ、カッコやーえ」
と叫んだところ、暗くなった沼の真ん中から、チャプチャプと水が立って、そして鳥ッ
コが飛びました。その鳥ッコが、
「あっちゃ取ってえったな。こっちゃ取ってえったな」
と叫んで林の中へ行ってしまいました。
それで、春になれば、カッコウが来るときに、『あっちゃ取っていったな』と云う鳥
ッコが飛んで来るでしょう。あれが、カッコだよ。どっとはらぇ。(毛馬内)
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