4001屁ったれ嫁の話
参考:鹿角市発行「十和田の民俗」
「お前、どこか悪いんでねえか」
っと、
「オレはな、持病を持っているために」
っと言ったけれど、
「何、持病があったって、毎日きつくて(過酷に)、毎日一杯働いてきて、どこが悪い
のかな」
「けけろなくしぃ」
っと、そう言ったからね、
「何で屁ぐらいなら、我慢しないで、たれれ」
そうしたら、今度はね、その嫁さんが今度会ったら、
「お婆ちゃん、いいですか」
っと言って、たれました。
そうしたら今度は、馬屋マヤの木戸がズッポ抜けて、跳ね回っていた嫁のケツ元に、ズ
ッポリ来て、刺さるまでにはいかなかったけれど、馬屋は木戸が抜けてしまって、馬は
庭(土間)に出てくるし、騒動したので、
「ひゃあ、このように屁ったれる嫁は、とっても俺の家に貰っても、困るためにな、お
前は家へ帰ってくれ」
っと、そのように言いました。
そうしたら嫁は、
「しかたがない、お婆ちゃん、そうしたら帰らせて下さい」
っと言ったところが、柿をほろって(揺すって)いた子供達が居て、
「俺は、あの棒を投げても落とせない。俺が投げたのも落ちない」
っと、騒いでいたところに、
「いや、その柿をほろくのならば、幾らも面倒ではないよ」
っと言ったので、だから、
「下ろせるか」
っと、薬屋さんが言っていて、
「いや、その柿が幾ら、幾ら面倒なく、オレが屁ったれれば、みんな落ちてくる」
っと言いました。
「お前が屁ったれて、その柿をみんな取れるならば、俺はこの薬をみんなお前にやる」
っと、薬屋さんがしゃべったところで、
「んだか、たれてみるからね、みんな去ってくれ」
っと、そして今度は柿の木にお尻を向けて、屁ぃブウウッとたれました。
そうしたら、今度はな、柿がみんなボタボタッと落ちてきてしまいました。そして薬
屋さんが約束したものだから、やむを得なく、
「やあ、あんたに負けた」
っと、
「俺は、この薬ッコをみんなやらねばならない。俺は帰るから、お前はこの薬をみんな
背負って行ってくれ」
っと。
その嫁ッコが薬を貰ったので、
「お婆ちゃん、お婆ちゃん、何の薬も入っるそうで、ほら、腹痛の薬も、風邪の薬ッコ
もみんな入っているそうです」
っと、
「どんなものも、入ってるそうです」
っと、
「薬屋さんから、貰ってきた」
っと、そうしたら、
「何をして貰ってきた」
っと言ったけれども、
「今、柿をほろこうと子供が騒いでいたので、『柿をオレがほろってくれる』と言った
ら、『ほろける筈がない』っと薬屋さんが、『あんなに多くの数をほろければ、俺はみ
んなこの薬ッコをやる』っと約束したために、オレがみんな貰ってきた」
っと、
「いや、そうしてな、屁ッコたれて、薬ッコまで貰ってくるような嫁ッコならば、宝嫁
コだ」
っと言われて、そこへまた戻って、その嫁さんは一生懸命働いて、姑さんに、よく尽く
して働いた、働き手の嫁さんであったと云うことです。どっとはらぇ。(倉沢)
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