3901空っ骨病みと鬼
参考:鹿角市発行「十和田の民俗」
昔ね、空っ骨病みカラッポネヤミがありました。稼ぎたくなくて、甘い物を食いたくて、良
い物を着たくて居ました。
それでお宮さんへ行って、神様へ願いました。
「何とかして稼がないで、甘い物を食って、良い処へやって下さい」
と一生懸命に拝みました。けれども、そのうちに眠ってしまいました。眠ったところで、
神様が夢を見せたと云うのです。ずっと山奥へ行ったときのことでした。
「白い水が流れる方と、赤い水が流れる方とがあったら、赤い水が流れる方へ行け」
と神様が言いました。
それで赤い水が流れる方へ行ったら、立派な御殿みたいな家がありました。そこへ行
って見たら、ただおいて(何もしないで住まわせておいて貰い)、毎日甘い物食わせて
遊ばせておきました。
何日も居たところで、馴れてしまって、ずっと奥の方へ行ったら、
「ねっこ、ねっこ、ねっこ」
と、温ヌクくて、うなる音が聞こえてきました。僅かの隙間から覗いたら、鬼どもが居て、
人の手足を締めて、あぶって油を絞っていました。それならば、ここに居られないと思
って逃げました。逃げたら、鬼どもに追いかけられました。
向こうに、ちっぽけな笹小屋が見えました。そこへ隠して貰うと思って、入りました。
そうしたらそこに婆が居ました。
「やあ、鬼どもに追いかけられてきたために、俺を隠した呉れろ」
と言いました。
「そう言うなら」
と言って、菰コモにくるんで(包んで)、火棚にチョコッと上げました。そうしたら鬼が
来て、
「婆、今、人間が来なかったかな」
「来ない」
と言ったら、鬼が、
「来たろう、人間臭いな、これは何だ」
「これは、納豆や」
と言ったら、
「納豆だぁ? 未だ出来てないな、下ろせ」
「未だ出来てない」
と婆が言ったら、鬼が、
「納豆を食いたいな」
と言って、鬼がボッキリと突っつきました。
そうしたら、ボタッと落ちて、足がドタラッとしていました。
そう云う夢を見たそうです。神様は、そう云う夢を見せたのでしょう。どっとはらぇ。
(毛馬内)
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