39 空っ骨カラッポネ病みと鬼
 
                 参考:鹿角市発行「陸中の国鹿角のむかしっこ」
 
 昔ね、空っ骨病みかありました。稼カセぎたくなくて、旨い物を食いたくって、いい着
物を着たくて居ました。
 それで、お宮さんへ行って、神様に頼んだのでした。
「何とかして稼がないで、旨い物を食って、良い処へ(お嫁に)やって下さい」
と、一生懸命拝みました。けれども、そのうちに眠ったところで、神様が夢を見させた
ようです。ずっと山奥へ行くようにと。
 「白い水が流れる方と、赤い水が流れる方があったら、赤い水の流れる方へ行け」と、
神様が仰オッシャいました。
 
 それで、赤い水の流れる方へ行ったら、立派な御殿ゴテンみたいな家がありました。
 其処ソコへ行って見たら、唯タダ置いて、毎日旨い物を食わせて、遊ばせて置きました。
 何日も居たところで、慣れてしまって、ずっと奥の方へ行ったら、
「ねっこ、ねっこ、ねっこ」
と温ヌグくて、唸ウナる音が聞こえて来ました。僅ワズかの木目キメっこ(隙間スキマ)から覗
ノゾいたら、鬼達が居て、人の手足を縛シバって、炙アブって、油を絞シボって居ました。
「それならば、此処ココに居られない」と思って逃げました。逃げたら、鬼達に追い掛け
られました。向こうに、僅かの笹小屋っこが見えました。向こうに隠して貰モラおうと思
って入って行きました。そしたら、其処ソコに婆ババが居ました。
「やあ、鬼達に追われて来たために、俺を隠して呉れろ」
と言いました。
 
「それなら」
と言って、薦コモにグルグルンッと包クルんで、火棚ヒダナにチョコッと上げて呉れました。
そしたら、鬼が来て、
「婆、今、人が来なかったかな」
「来ない」
と言ったら、鬼が、
「来ただろう。人臭いな。これは何だ」
「これは、納豆ナットウや」
と言ったら、
「納豆だぁ? 未だ出来ないな」
「おうそうよ、未だ出来ない」
と婆が言ったら、鬼が、
「納豆を食いたいな」
と言って、ポッキリと突っつきました。そしたら、ポタッと落ちて、足がドタラッとし
ていました。
 
 そう云う夢を見たそうです。神様はそう云う夢を見させたのでしょう。
 どっとはらえ。
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