37 馬の尻穴シリアナを覗ノゾいた旦那ダンナさん(花輪)
参考:鹿角市発行「陸中の国鹿角のむかしっこ」
昔、あったのです。
まず、此処ココいら辺りなら、石鳥谷イシドリヤの旦那さん見たいな人が、腰に酒この入っ
た瓢フクベこを下げて、ドックドックと酒こを飲みながら、馬こに乗って行きました。
行くが行って、丁度女神メガミ(十和田錦木地内)の辺りへ行ったら、どうした訳だか
急にマグマグと辺りが暗くなって来て、乗っていた馬こもゴロンと横になって、寝てし
まいました。
馬こは寝てしまったし、真っ暗で一寸イッスン先も見えない闇夜ヤミヨみたいになったため
に、旦那さんも困ってしまって、馬この側にボヤッと立っていたら、何処ドコからともな
く賑やかな囃子ハヤシこが聞こえて来ました。
「ハテ、何だろうか」と、辺りを見渡したら、ポツンと小さな灯りアカリこが見えまし
た。ソコッと側へ行って見たら、それは塀垣ヘガキに空いた穴から漏れた灯りこで、穴こ
に眼マナグを当てて見たところが、ナント、中の家では大した大きな座敷ザシキこがあって、
ガンガリと灯りこ点ツけて、ジャンジャめかして酒盛りサカモリの真っ最中であったそうで
す。
ご馳走は二の膳ゼンも三の膳も付いた大振舞オオブルマイで、綺麗キレイな姐アネ様達がゾロゾロ
と並んで座って御座って、お酌こするやら、唄こ歌うやら、踊りを付けるやら、その賑
やかなこと、まんず、大したものでした。
あんまり面白そうに騒いだり、酒こを飲んでいるので、旦那さんも語りたく(仲間に
なりたく)なって、思わず大きな声で、
「姐こ、姐こ、俺オレにも一杯注ツいで呉クれろ」と、叫んでしまいました。そうしたら後
ろらら、
「旦那さん、旦那さん、何をしてお出イでか」
と云われて、ハッと思って頬ツラを上げて見たら、此処ココいら辺りの百姓が後ろに立って
いて、お天道テントウ様(お日様)は女神の方へ傾いているけれども、辺りは何時イツの間に
か元通りに明るくなり、寝ていた馬こもシャンと立っていて、自分は、その馬の尻穴に
頬を付けて覗き込んでいたのでした。
女神の辺りは昔から質タチの良くない狐が居て、騙ダマされた人がいっぱい居たのでし
た。
どっとはらえ。
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