34 久保田の狐っこ(花輪)
参考:鹿角市発行「陸中の国鹿角のむかしっこ」
昔昔、久保田クボタへ行く田圃道に、良くない狐が出張テハて、よく人のことを馬鹿にし
ました。暗くなってから提灯チョウチンこ下げて行くと、提灯にパァーと尾っぽをぶっつける
のですよ。提灯こはボダッと落ちて、灯ヒが消えて真暗闇ヤミになればね、狐こはめんこい
女オナゴに化けて、
「晩バンゲになったんですね」
と言って出張りました。
「俺オレも一緒に連れて行って下さい」
と、後ろからスタスタと付いて来るのです。
お振舞フルマイのご馳走を沢山風呂敷に包クルんで、背中に背負っている人は、「これは狐
だな」と思っても、おっかなくて、おっかなくて、ぶるぶる震フルえながら歩くのです。
あんまりおっかないために、何処ドコをどのように歩いたか分からなくなって、気が付い
て見たら、田圃の真ん中に黙ダマって座っていました。
頭の毛はボサボサ、着物は泥包ドロクルみ、手も足も傷だらけで、赤い血がダラダラ。履
物ハキモノは何処で脱ヌげたか、背中の風呂敷に何も無くなって、頭の上に朝日が高くなって
いました。
この狐っこはね、男の人には、めんこい女に化けるし、女には綺麗キレイな小姓コショウにな
って出張るのですよ。
おっかないや、おっかないや。どっとはらえ。
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