33 良い燗カンとあっぷっぷ(花輪)
 
                 参考:鹿角市発行「陸中の国鹿角のむかしっこ」
 
 昔、あったのです。
 山の中のお寺に、和尚さんと小坊コボウさんが二人居ました。和尚さんは欲張りヨクバリ
で、手前ばかり旨い物を仕舞シマって置いて、食ったり飲んだりしました。
 和尚さんは、正月になれば毎晩バンゲ、小坊達のことを先に寝かせて、手前ばかり餅モチ
を炙アブって、酒こを沸ワかして飲んでいました。和尚さんは、餅が炙れれば「あっぷっ
ぷ」、酒こが沸けば「良い燗カン、良い燗」と言いました。
 小坊さん達は何とかして、俺達も「餅を食ったり、酒こを飲みたいものだ」と思いま
した。それで和尚さんに頼んで、「あっぷっぷ」と「良い燗ヨイカン、良い燗ヨイカン」と名前
を付けて貰いました。
 
 また晩になって、和尚さんが一人こで餅を炙って、
「あっぷっぷ」
と言ったら、
「はい、和尚さん何か用こですか」
と一人の小坊さんが出て行きました。今度は、酒の燗こが付いたので、
「良い燗、良い燗」
と酒っこを飲む気になったら、もう一人の小坊さんが、
「はい、和尚さん何か用こですか」
と言って出て行きました。和尚さんは、仕方無しにそれからは何でも、みんなに分けて
やりました。
 どっとはらえ。

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