3101 お寺の小僧と鬼の話
 
                       参考:鹿角市発行「十和田の民俗」
 
 昔、昔あったのです。
 お寺の小僧さんが、和尚さんのお使いで山へ行きました。『早く帰って来いよ』と、
言われたけれども、歩いているうちに、何時の間にか暗くなってしまいました。ずっと
歩いていたら、一軒のの家がありました。そこで小僧は、
「どうか、ここに一晩泊めて下さい」
と頼んだら、出てきた鬼のような顔をしたお婆さんが、怖い顔をして、
「泊まれ」
っと、言いました。ずっと奥の部屋に寝かせました。食う気になっていました。
 
 夜中に目を醒まして起きたら、お婆さんは、鬼になっていました。それを見たら、恐
ろしくなって、恐ろしくなって、居られませんでした。
「お婆さん、お婆さん、便所へ行きたいから、やって下さい」
と言いました。そうしたら鬼婆は、『逃げられる』と思って、小僧の腰に長い紐を付け
て、その端を引っ張っていました。
 
 小僧は、出かけるとき、和尚さんから貰ったお札のことを思い出しました。小僧はそ
のお札を投げて走りました。
「小僧、小僧、未だかな!」
と鬼婆がしゃべれば、小僧の代わりにお札が、
「「未だだー、まだまだ」
と言いました。そうしているうちに、お寺に着いてしまいました。
 
 小僧は和尚さんに、鬼婆に追いかけられていることをしゃべっていると、
「捕って、喰ってけりゃー」
と、とうとう鬼婆は、寺まで追っかけてきました。
 それを見た和尚さんは、お寺の中へ入っていって、豆ッコを持ってきました。そして、
「鬼の面、鬼の面」
と言って、鬼にぶっつけました。
 鬼はびっくりして、さっさと山へ逃げてしまいました。どっとはらぇ。(大欠)
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