26 ドドの虎の話(八幡平)
 
                 参考:鹿角市発行「陸中の国鹿角のむかしっこ」
 
 昔、昔ある処に、ドドの虎トラと云う獣ケダモノが居ました。毎日、真夜中に出張デハて来
て、村この中の馬こも、牛ベコこも、殆ど食われてしまいました。
 今度は人間を片端カタッパシから食い始めたために、村こ中が大騒ぎになりました。
 その村の外ハズれっこに、父アナと母アッパと童子ワラシ三人の、五人竈カマド(家族)の家が
ありました。父も母も何時イツも神様や仏様を拝むし、正直者でみんな良い人ばかりでし
た。
 村こ中の人達はみんな食われてしまって、今夜はその五人の家の人達が食われる番こ
に当てられていました。有るだけさっぱりのご馳走を拵コシラえて、みんなで腹いっぱい食
べて寝ました。
 
 そうしたら、真夜中の寝静まった頃に、ドドの虎がミシリ、ミシリと家の中へ入って
来ました。そこで、父は大きな声して、
「ドドの虎より、古家フルヤの雨漏りの方がおっかない」
と言いました。ドドの虎はそれを聞いて、
「俺が世の中で一番おっかないと思っていたら、古家の雨漏りって、そんなに強いもの
なのか」
と、おっかながって、そのまま逃げて帰りました。そのために、みんな助かって、それ
から段々人が増えて、幸せに暮らしたそうです。
 どっとはらえ。

[次へ進む] [バック]