24 猿蟹の合戦カッセン
 
                 参考:鹿角市発行「陸中の国鹿角のむかしっこ」
 
 昔、あったのです。
 ある処に、猿サルと蟹カニが居ました。二匹して、泡沫ホウマツ・ホマツ田(隠カクし田)こを作り、
糯米モチゴメを取って、その米こでペッタンコ、ペッタンコと餅を搗きました。餅搗きが終
わったら、欲張りな猿が、蟹に、
「この臼ウスを転がして、先に追い付いた奴が餅を食うことにしよう」
と決めたために、蟹も、泣く泣くそれに従いました。そして、猿は山から臼を転がして、
自分だけドンドンと走って、臼を追い掛けました。
 先に行って、蟹が来る前に、餅を食ってしまおうと思って待っていたら、臼の中に餅
は何にも無かった。
 
 蟹は、猿に餅をみんな食われてしまったと思って、泣く泣く走って行ったら、途中の
草むらの中に、餅がごっそり落ちていたために、蟹は大喜びで食っていました。其処ソコ
へ猿が息を切らして登って来て、
「蟹や、蟹、俺にも餅を呉れろ」
と言いましたが、蟹は、
「約束が違うだろう。呉れない」
と、言いました。猿は、
「よし、呉れなければ、山々の千匹の猿を連れて来て、蟹の甲羅コウラを離して呉れる」
と、怒って帰って行きました。蟹は、動転ドウテン・ドデンして大声を発タてて泣いている処
へ、臼が来て、
「蟹や、蟹、何して泣いている」
と聞いたら、蟹は、
「猿に餅を呉れないと言ったら、よし呉れないと山々の千匹の猿を連れて来て、蟹の甲
羅を離して呉れると、怒って行った」
と言いました。そこで、臼は大いに腹を立てて、
「猿め、狡ズルい奴だ」
と言って、とち(トチの実)や、つむ(毛糸をよる)や、牛ベコのばば(糞フン)などを集
めて、狡い猿をやっつける相談をしました。とちが火の中に入って、蟹は水甕ミズガメに、
臼は梁ハリに上って、牛のばばは庭に居て待っていました。それを知らないで、猿は、
「ああ、寒い、寒い」
と言いながら、腹を出して火に当たりました。火の中に居たとちは、この時だと思って、
猿の腹をめがけて、ドンと弾ハジけたら(はねたら)、
「あっちちち・・・・・・・・」
と叫んで、水甕に入りました。蟹は、猿の赤い尻ケッツを鋏で鋏みました。
「あ痛い、あ痛い」
と、庭に飛び出したら、牛のばばに滑って、転んだ上に、臼が梁から、ドンガリと落ち
て来て、
「根性良くない猿め、狡ズルいっこだ(ズレッコダ)」
と言って、散々懲コらしめたそうです。
 どっとはらえ。

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