22 あらんこ こらんこ(八幡平)
 
                 参考:鹿角市発行「陸中の国鹿角のむかしっこ」
 
 昔ある処に、お父ドさんとお母ガさんと「あらんこ」と云う子供がありました。お父
さんは、毎日稼カセぎに行って、何時イツも家に居ませんでした。そうしているうちに、お
母さんは病気に罹カカって死んでしまって、それは、あらんこが六つの時でした。そうし
ているうちに、新しいお母さんが来ました。それからは、あらんこと継母ママハハばかり家
に居ました。
 ある日の事、お母さんが庭の大きい据釜スエガマに、湯を煮立てていました。そうして、
「あらんこ、一寸チョットの間、此処ココの釜の縁フチを渡れ」
と言って、釜の上に上げて、釜の蓋フタをデロリと取って、ビヂャンとおっ潰しました。
あらんこは、煮立った湯に入ったために、すぐに死んでしまいました。
 そこで、お父さんの来ないうちに片付けるために、山奥へ背負って行って、土に穴を
掘って埋めてしまって、知らん顔をして居ました。
 
 「あらんこ、何処ドコへ行ったのか」
と、お父さんが聞いても、
「何処へ行ったか、遊びに行って未だ来ない」
と言うので、村の人達を頼んで、あっちこっち探したが、里に居ないので、山へ行って、
「あらんこやぇ、あらんこやぇ」
と大きい声を出して探したけれども、幾ら探しても居ませんでした。みんなは、
「山の鬼に、捕って食われたのだろう」
と言って、諦アキラめていました。
 
 そのうちに、新しいお母さんに「こらんこ」が生まれました。矢っ張り六つになって、
あらんこの話こを知らせたら、山の奧へ行って、
「あらんこやぇ」
と探し回り、強コワくなって(疲れて)、とうとう死んでしまいました。みんなが探して
行ったら、あらんこを埋めた処で死んでいたのでした。それで、その処に一緒に埋イけて
やりました。
 新しいお母さんは情けながって、毎日、その墓へ行って、
「あらんこ、こらんこ、悔しい、南無阿弥陀仏ナンマイダ」
と毎日泣いていましたが、とうとう強コワくなって死んでしまいました。
 どっとはらえ。

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