1901 五月の節句に菖蒲と蓬を軒に刺す訳
 
                       参考:鹿角市発行「十和田の民俗」
 
 昔、
「ままかね、かが、ほしぃもんだ(ご飯を食わない妻が欲しいな)」
と、言っていた男が居ました。そうしたらあるとき、
「オレ、ままかねぇので、嫁コにしてくれ」
と、綺麗な女オナゴが来ました。男は『ままかねば良い』と思って、カガにしました。そ
のオナゴは、とっても綺麗だったので、男は、何時も綺麗な物ばかり着せ被せてして、
飾っておきました。
 
 あるとき、男は米俵が足りなくなっていたのに気付きました。『ままかねのに、おか
しいな(妙だな)……』と思って、その日は、山へ稼ぐに行かないで、梁ハリ(屋根裏)
に隠れて、こっそり見ていました。そうしたら、何時も綺麗なオナゴは、すっかり恐ろ
しい女鬼になって、大きな釜に、俵から米をあけて、ママを炊いて、大きなにぎりまん
まをこしらえて、頭の髪をドワッとほどき、頭の中にある大きい口を開けて、大きいに
ぎりまんまをドンドン入れて、喰っていました。男はびつくりして、梁から逃げるつも
りで降りてきました。
 
 女鬼は、
「見ていたな!」
と言って、追いかけてきて男を捕まえ、ダンカ(糞尿を入れる桶)に男を入れて背負い、
山へ向かって走り出しました。男は、おっかないもんだから、暴れて、ダンカから下り
て逃げました。女鬼は髪を振り乱して、恐ろしい顔をして追いかけてきました。
 男は追い詰められ、『どこへ隠れようか……』と思って、辺りを見たところ、菖蒲と
ヨゴミ(蓬ヨモギ)が一杯茂った所がありました。男は、その中に入って、隠れました。
 
 女鬼は、
「臭い、臭い」と言って、男を捕まえるのをあきらめて、山へ逃げて行きました。
 菖蒲とヨゴミのお陰で男は命拾いをし、助かったと云う。それ以来、魔除けとして、
節句には軒先に刺したものだと云う。どっとはらぇ。(丸館)
[次へ進む]