18 化け狐(長嶺)
 
                 参考:鹿角市発行「陸中の国鹿角のむかしっこ」
 
 昔の話だけれども、長嶺のある家の爺様が花輪の市マチへ行こうとして、朝間早く起き
て出掛けたら、狐が川原の石の処で、居眠りしていました。爺様は「狐の野郎、朝間か
ら居眠りなどして」と思って、石をブンとぶっつけたら、狐が魂消タマゲてしまって、下
の川へジャブリと落ちて行きました。
「様ザマぁ見ろ」
と言って、行ってしまいました。
 そして市へ行って帰って来たところ、途中まで来たら、急に暗くなって来ました。
「あれ、未だ飯鍋メシナベ時分でもないのに、おかしいな」
と思って、覚えている(知っている)爺様の処へ行って、
「灯ヒこ貸して呉れろ」
と言いました。そうしたら、爺様大した喜んで、
「灯アガシこもだけれども、良く来て呉れた。俺今、婆様に死なれて困っていたところだ。
急に死なれたもんで、隣りへ知らせにも行かれないで居たところだ。知らせに行って来
る間で良いから、留守番をしていて呉れ」
と言って行ってしまいました。
 
 死んだ婆様は尊座ソンジャに寝せてあったが、おっかないために、貧座ヒンジャに座って番
をしていました。そうしたら、死んだ婆様がムクムクッと起き出してきて、鉄漿付カネツケ
箱から取り出して、鉄漿オハグロをコチョコチョと付けて、
「爺ジ、付いたか」
と寄って来ました。また、コチョコチョ付けて、
「爺、付いたか」
と寄って来る訳よ。爺はおっかなくて、ずっと後退りアトズサリして、ずっと後退りして、
上がり端パからポクリひっくり返って、落ちてしまいました。
 そうしたら、川の上みから村の人達が、
「おや、爺様、川の中でワッパワッパと何してるのか」
と思って見ていました。其処ソコは、朝間に狐に石をぶっつけた処で、徒アダしたために狐
にまやかされて、騙ダマされたのでした。
 昔は、このような話こを聞かされたものでした。
 どっとはらえ。

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