17 鬼退治オニタイジ
 
                 参考:鹿角市発行「陸中の国鹿角のむかしっこ」
 
 昔ある処に、沢山鬼が居て、都の方で子供がさらわれたり、食べ物を持って行かれた
りするために、大した困って、どうにかして鬼を退治する工夫がないか、と考えていま
した。それで頼光達が鬼退治をしなければならないと思って、山伏ヤマブシの姿になって、
一に頼光、二に渡辺・・・・・・・・六に金時と云って、揃って山伏に化けて鬼退治に出掛けま
した。
 遠い山へ入って行ったところが、ずっと山奥に行ったら、年取った爺様が居て、鉞
マサカリを「ガダンガダン」と研トいでいました。それであったので、
「鉞をどうして研いでいたのか」
「俺の家の婆様が針を折ってしまってな、持たなくなったので、針を拵コシラえて呉れよう
と思って、鉞を研いでいたのだ」
「はあ、そうだけれども、鉞を針にするのなら、なかなか容易でないだろう」
「けれども、この山に他に針を拵える物は何にも無いために、こうしているのだ。何処
ドコへ行くところだ」
「あんまり鬼が余計ヨケイ(多い)なので、どうにもされなくて、鬼退治に出掛けて来たと
ころだ」
「そうなら、まず此処ココへ泊まって行け」
 そこで、爺様と婆様の処に泊めて貰うことにしました。
 
 行くときになったら、
「この酒を土産に呉れてやるために。この酒はな、鬼に飲ませれば千人の力が落ちるし、
人が飲めば千人の力が付くのだために、これを飲ませろ。そしてみんな、自分達も飲め
ば良いのだ」
 次の朝間、出掛けて行きました。ずっと行ったら、門が立っていました。門に赤鬼の
門番が居ました。
「何処ドコへ行く」
と云いました。そこで、
「道に迷って来たから、何とかして通して下さい」
「通って良い」
と言いました。一の門を潜クグって、二の門へ来ました。そうしたら、其処にも門番が居
ました。其処でも同じ事を言って通して貰って、三の門へ行きました。三の門でも同じ
事を言ったら、鬼の門番が、
「此処からは何処へも行く処が無い。此処へ泊まって行け」
「そうしたら、どうか泊めて下さい」
 
 鬼達がいっぱい居た処へ入って行って、さあ、何処を見ても鬼だらけでした。どうし
たら良いだろうかと思いました。其処へ入って行って、
「この酒は都の銘酒だから、お土産に持って来たから、飲んで下さい」
と言ったら、鬼達は喜んで酒を飲んで、みんな酔っぱらってしまって、ぐうぐうと眠っ
てしまいました。今度は山伏の人達が飲んだところで、何もかも力が付いてしまいまし
た。「これから征伐するぞ」と思って、鬼達をズッパズッバと端から切り倒して行った
ところで、鬼達は酔ってしまって、力こを無くしてしまっていたところで戦いました。
「未だ居るかなあ」と思って、そこいら中を巡って見たところで、「居ないようだ」と
思いました。
 
 便所の中を見たところで、小さい痩せた鬼っこが隠れていました。ブルブルブルと震
えていました。
「あっ、此処に一匹居た。これもだ」
 子っこ鬼っこが、
「後アト絶対に悪い事をしないから、何とか助けて下さい。俺が殺されれば、後は鬼が絶
えてしまう。この世の中に鬼と云うものが無くなってしまうために。絶対悪い事をしな
いから、何とかして助けて下さい」
と言いました。子っこ鬼っこが可哀想だったために、助けてやりました。
 それで、その人達が鬼退治して呉れたために、鬼が居なくなったのだそうだ。
 どっとはらえ。

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