13 猿捕り地蔵(八幡平)
 
                 参考:鹿角市発行「陸中の国鹿角のむかしっこ」
 
 昔、あったのです。
 畑に猿が沢山来て、大した悪戯イタズラをしました。そこで、爺様ジサマはある日、
「婆ババや、婆。米の粉コっこを砕ハタけ」
と言って、米の粉っこを体に塗って、畑の石の上に立っていました。
 猿達が集まって来て、
「此処ココに地蔵さんが居た、お堂っこへ持って行って納めてやろう」
と言いました。
「良い地蔵様を見付けた。良い地蔵様を見付けた。さあ、負オんぶ申して行きましょう」
と言って、爺様を手車テングルマに乗せて、
「この手車に誰乗った。地蔵様乗った」
と歌いながら、担ぎ出しました。
 
 そして、川へ来ました。
「猿の尻ケッツ濡ヌれても、地蔵の尻濡れるな」
と歌いながら、川を渡ってお堂っこへ連れて来ました。
 地蔵様の前に、栗とか、通草アケビとか、葡萄ブンド酒などを上げて拝みました。そし
て、その葡萄酒で酒盛りして、みんな酔いました。
 そこで、爺様は作り声を出して、
「石枕と槌ツチを用意して寝ろ」
と言いました。
 猿達はその通りにして、酔っていたために、ガンガン鼻言ハニゴト(鼾イビキ)をしながら
眠ってしまいました。
 そこで、爺様は槌で猿の頭をガッチ、ミッチと叩タタいて、みんな殺してしまいました。
 
 それを担カツいで来て、帰りしな(の折)に町へ持って行って、売りました。
「肝キモっこ 三十、身は 六十、頭コウベは 十文で、丁度 百だ」
と叫んで売って歩いたら、どんどん売れました。
 その残りを家へ持って帰って、婆様バサマと猿汁にして食っていました。
 其処へ、隣りの婆様バサマが
「火っこ給えれタモレや」
と言って入って来ました。
「火っこもやるども、まず猿汁を上がって下さい」
と言って、猿汁を御馳走して、隣りの婆様へ猿の捕り方を教えてやりました。
 
 隣りの婆様は家に行って、炉イロリに中アタっている爺様ジサマに、
「隣りの爺様がよ、猿を捕って来たのだ。そなたも炉端に中って、灰アクばかり弾ハジって
いないで」と、隣りから聞いて来た、猿の捕り方を教えました。
 次の日、隣りの爺様は教えられた通り、地蔵様の真似マネをして立っていたら、また、
猿達が沢山来て、前の通り担ぎ出しました。
 川の深みへ来て、猿達は、
「猿の尻ケッツ濡れても、地蔵の尻濡れるな」
と歌ったら、爺様が可笑オカしくて可笑しくて、大きな声を出して笑ってしまいました。
 そうしたら猿達は、
「これは、地蔵様では無い、人だ」
と言って、手を離して、みんな行ってしまったので、爺様は川の深みに落ちて、危アブな
く溺オボれそうになって、おっかない目に遭いました。
 
 婆様は今に爺様が猿を沢山捕って来るだろうと、鍋を掛けて待っていたら、爺様は、
うん、うんと唸ウナって来たので、沢山の猿っこを背負って重たくて唸って来たのだろう
と、外へ出て見たら、濡れてひどい目に遭って、唸って来たのでした。
 だから、
「人の真似マネをすれば、大水食クらう」
と言って、人の真似をするものではないです。
 どっとはらえ。
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