03 猿サルと蟹カニの寄合餅ヨリアイモチ
参考:鹿角市発行「陸中の国鹿角のむかしっこ」
昔、あったと云う。
猿と、蟹があったと云う。
ある日、猿が、
「蟹や、蟹、稲の穂っこを拾って餅モチを搗ツかないかい」と誘いに来ました。蟹は、
「おー」
と返事して、田へ落穂オチボ拾いに行きました。
拾った穂っこを米に熟コナして、いよいよ餅を搗くことになりました。そうしたら、猿
は、
「蟹や、蟹、高い処に行って搗こう」
と言って、さっさと山へ登って行きました。
「猿や、猿、此処らで搗こう」
「もう一寸チョット上で」
そこでまた、登って行きました。
「猿や、猿、此処らでどうだ」
「もう一寸」
そこでまた登ったら、もう山の天辺テッペンでした。
「此処で搗こう」
そこで猿と蟹は、
エンサド、ガッタラヤ。
エンサド、ガッタラヤ。
と、餅を搗きました。やっと搗き上がったら、猿は良い事を思い付いたと云う顔つきを
して、
「蟹や、蟹、この餅をただ食っては詰まらない。この坂から転がして、拾った奴が食う
ことにしよう」
と言って、返事も聞かないで臼ウスをデグッと転ばしました。臼は笹っ原ササッパラをゴロン、
ゴロンと転げ落ちて、猿はその後をポンポン跳ね上がって、追い掛けて行きました。蟹
は呆アキれて、
「あやや、仕方ないな」
と言って、笹っ原をそろりと下りて行きました。そうしたら、途中の笹っ原の陰に、木
の葉っぱだらけの餅がゴドッと落ちていました。
「これは勝負した(うまくいった)」
蟹はホクホクして餅を食っていたら、猿は薮ヤブの中を掻き分けて、真赤な頬ツラをして
登って来ました。蟹が餅を食っているのを羨ウラヤまし気に見ていたが、我慢ガマン出来なく
て、
「蟹や、蟹、その餅を一寸チョットだけ、俺オレにも呉クれろ」
と頼みました。
「お前は一人して食う気になっていたではないか。やる訳にはいかない」
「その木の葉っこの付いたところでも良いから、呉れろ」
「木の葉っこが付いても、おっぱら、さっぱら食えば、旨いだろう」
「それなら、土こが付いたところでも、呉れろ」
「土こが付いても、おっぱら、さっぱら食えば、旨いだろう」
蟹は、すまして言いました。
どっとはらえ。
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