01 地獄追放(毛馬内)
 
                 参考:鹿角市発行「陸中の国鹿角のむかしっこ」
 
 昔の話こです。
 毛馬内ケマナイの古町みたいな処に鉄斎テッサイと云う医者と、十王院ジュウオウインと云う山伏ヤマ
ブシと角之進と云う手品使い(テヅナツガイ)の三人がいました。
 何と不思議にことに、三人とも同じ日の死んでしまって、同じ日に葬式を出すことに
なりました。閻魔大王エンマダイオウはその話を聞いて、
「今日は大変な人ばかり来る日だ」
と言って、赤鬼から青鬼まで集めて待っていました。そこへ医者と山伏と手品使いの三
人が来ました。
 
 「今日は、ろくでもない者ばかり来た。医者は少しばかりの薬を上げて。何十倍も銭
こ(ゼンコ)を取るし、山伏はハンニャモンヤラっておかしげなことを言って人を騙ダマす
し、手品師はあまたの人のことをごまかして銭こ稼ぐ。鬼ども、三人とも飲み込んでし
まえ」
と言いました。鬼どもは喜んで三人とも飲み込んでしまいました。
 そうしたら、手品師と山伏とが、
「医者さんよ、ここはお前の役だ。何とか、下クダしでも掛けて下さい」
と言いました。医者は腹の中に入って、下しを掛けたら、鬼は腹痛ハライタを起こして、
「ウンウン」
と言って、とうとうベロン、ベロンと出してしまいました。
「閻魔大王さん、何もかも、非常に腹が痛くなって、三人ながら出てしまいました」
と言いました。
「仕方がないな、今度は熱い湯に入れて煮てしまえ」
と、釜の湯にドンドンと火を焚いて、「その湯っこに入れ」と言いました。
 
「今度は山伏さん、法マジナイを掛けろ、法を掛けろ」
と、三人とも煮てしまおうとするところであったが、山伏が一生懸命に法ホウを掛けて、
丁度いい湯加減にしてしまいました。
「おお、いい湯っこだな、娑婆シャバに居たときだって、こんなにいい湯っこに入ったこ
とはなかった。此処ココで娑婆の垢アカ落としでもするか」
「ああ、そのようにしたに良かろう」
とて、三人とも、
「いい塩梅アンバイだ」
とて、湯っこに入った訳です。鬼どもは、
「閻魔大王さん、何とすれば、良いですか」
と言いましたら、
「何と困った者ばかり来たなあ、今度は剣ツルギの山へ登らせろ」
と言いました。
 
「手品師、手品師、今度はお前の番だ」
と言われて、手品師はしころ節(流行り唄)に囃子ハヤシを付けて、
♪チャンチャン チャラスコ チャンチャン
  スッチャン スッチャン スッチャンチャン
と、剣の山をツンツンツンと上がって行きました。閻魔大王も呆アキれてしまって、
「娑婆で悪たれる奴は、地獄へ来ても悪たれる。芸は身を助けると聞いたのは、この事
だろう。今度は極楽浄土ゴクラクジョウドへ追ってやれ」
と言ったので、三人ながら極楽の蓮ハスの葉の上に、ポンポンと飛ばされたそうです。
 どっとはらえ(お仕舞い)。

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