142 屁ったれ女の話
参考:鹿角市発行「十和田の民俗」
昔、ある所に屁ったれる、屁ったれ女オナゴっと云う女が居てな、その女がな、どこへ
行っても屁ったれて、屁ったれる登録を取ってる分だけ屁ったれるのでした。
そしてな、あっちの沢でたれても、こっちの沢でたれても、
「いっせいだかと思った、お前なのか」
と言われる位の屁ったれでした。
そうしたらあるとき、今度は大湯の温泉町へ行って、帰ってきたら、年取ったお婆さ
んと帰ってきて、
「いや、お前は、かずのどこもねえ いしやくのか」
っと、その頃言ったの。
そうしたら今度はその屁ったれ女が、
「オレはね、栄養失調ではないかと言われて、稼がないで休んでいたために、何も稼げ
ないでね、かずのだもの、人間ですから、許せないな」
そして、家に帰って来る途中には、そのお婆さんと来たら、
「しゃっくりが出たくて、しゃっくりが出たくて、どうにもされなかったな」
と、家へ帰って来たので、そうしたら、ジャンジャかとやっているんだ。
その坂、大湯から登ってくる時、その在郷ジャンゴ坂まで来たら、
「あんや、お婆ちゃん、オレ、しゃっくりが出たくて、どうにもされない」
「はいろう、おれなんぼずんだって、とばされねえだべえ」
そうしたところで、その女が、二、三間あとを跨いで、たれるもたれる大きい屁。
ひゃ。
普通の屁であったら、フウッとたれるでしょう。それが、ブブウッとたれるので、そ
うしたら、そのお婆さんがびっくりしてしまって、後ろを振り向いて、
「あーい、お前にかってこれだもんな、かんのさこにふせえだと思ったが、なけてるき
ゃ、ほんとだわな」
そう言いました。
そして今度は、下の沢に行って、沢を行きながら屁をたれて、そうしたら、上の部落
の一本木っと云う部落に大きい、昔からの葛家クズヤ(萱屋根の家)があって、その家の
大黒柱が一尺五寸もあるような家があってね。
「いや、お前が屁ったれれば、そこの大黒柱がグラグラッとなって、地震だってお婆さ
んが、大黒柱にしっかりと、抱きつくって、そう云う大きい屁をたれるよね」
っと、云われる位の屁ったれでした。
そしてとうとう、屁ったれ女で登録を取って、一代を暮らしてきた女。これでどっと
はらぇ。(倉沢)
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