141 女の姿に化けた狐
 
                       参考:鹿角市発行「十和田の民俗」
 
 昔、夜の寄合などの帰りには、何時も通る道がありました。
 そのようなときの帰りには、その辺りの道に、子犬のようにチョコンと座っている狐
に出会うことがあるなど、ちょくちょく狐に出会うことがありました。
 
 先日の夜、ある部落から帰る途中、アカシアが沢山生えている辺りの道に、なんかこ
う女の装いで、サアッと出たのです。それで、
「お晩です」
言いましたが、女は黙っていました。『ありゃ、この時間にしては、誰かな、何だかこ
りゃ曲者だ』と思って、
「お晩です」
とまた繰り返したが、また黙っていました。そこで、
「この野郎」
と女の腕を掴みました。
 そうしたら、腕が丸く、コロッとしていました。
「何、人を馬鹿にして、この」
と、狐に怒りました。
 
 そして今度も気配を感じたので、『こん畜生、俺をだましに出てきたな』と思って、
そのままズウッと坂を降りてきて、そのアカシアの林の中に入って見ると、そこに、さ
っきの狐か何だかが、チョコンと座っていました。
 だから、この辺りにはよく狐が出るようでした。(長者久保)
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