138 犬に化けた狐
 
                       参考:鹿角市発行「十和田の民俗」
 
 幾つになるのか、五つか六つの就学前の子供でした。
 一寸暗くなってきた頃、子供が見えないと云うので、何でも、これは狐か何かにだま
されたと云うことでした。
 そして探したところ、広い所で、腹這いしながら歩いているのを見つけました。
「何で、ここに居たのか」
と、子供に訊いたら、
「わんコ(犬)と遊んでいた」
と。
 それは、狐がわんコに化けていたのですが、
「そのわんコが、『遊び友達になってくれなきゃ、何をするか分からないよ』と言った
からだよ」
と言いました。
 
 そこでわんコは面白くて、あちこち跳ね回って、暗い処も夜の町の明るいように見せ
て、一緒に遊んでいたのでした。
 そこは、当時は柴や銀杏の木の生えていた処で、
「面白くて、居るか居ないわんコと遊んで話をしていたのだな……」
と云う人も居ました。(下芦名沢)
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