137 狐が子供をさらった話
 
                       参考:鹿角市発行「十和田の民俗」
 
 ここの村は、下芦名沢です。下芦名沢のある家に小さな子供にはね、昔はお八つなん
て何にも無くて、ご飯を握って、塩を付けたり、味噌を付けて食べさせるのでしたね。
 おにぎりを持って遊んでいた子供が、見えなくなったので、幾ら家を尋ねても見つか
らなくて、村の中を出たか出ないか分かりませんけれども、今度はそこの家の前に集ま
って、方々を探したそうです。
 
 暗くなったので、今度はずっと山の向こうの、山道を辿って、ずっと山を越えて、野
原の方へずっと山辺に行きました。途中で、大根畑から大根を抜いた痕アトがあったそう
です。
 狐の足跡があったそうです。
 それからずっと、そうそうゲンノタイと云いますが、山坂越えて、野原へ行って探し
たが見つからないようでした。
 そこで、その女の子をおうめと云いますが……。
 
 芦名沢部落とは、当時は上芦名沢のことでした。あの辺りまでも探しに行ったでしょ
う。上芦名沢の人方が居て、気のきいた人でしたが、
「ああ、子供見つけた、子供見つけた」
と、大きな声でしゃべったそうです。
 人々が、狐の穴の寝ザコへ辿って来たので、狐は、『今度は酒米を頼んだのを見つけ
られたのを知ってしまわれた』と思っていたが、今は子供を見つけられたので、穴に入
っていました。
 そしてまた次には、お婆ちゃんに化けて、
「ばばやい、はばやい」
と、泣いたと云います。(下芦名沢)
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