121 半殺しか皆殺しか
 
                       参考:鹿角市発行「十和田の民俗」
 
 昔、昔あったのです。
 ある山の奥の淋しい村の家に、珍しいお客さんが訪ねてきました。みんなはとても喜
んで、何をこしらえて食わせたら良いかと相談しました。
「久しぶりだから(長いことしていないから)、鍋餅(おはぎ)にしよう」
と、言いました。
「それなら、半殺しが良いかな、皆殺しが良いかな……」
と、話し合っていました。
 
 その話し合いを障子の陰で聞いていたお客さんは、びっくりしたこと、びっくりした
こと、
『この家には、居られない』
と思って、後ろ手で荷物ッコをまとめて、裏口から、裸足で逃げて行きました。外は真
っ暗で、一寸先も見えなかったが、殺されるよりは良いと思って、一目散に逃げて行き
ました。
 
 『はんごろし』とは、粒あんのおはぎのことで、『みなごろし』と云うのは、こしあ
んのおはぎのことであると云うことを、そのお客さんは知らなかったのです。どっとは
らぇ。(大欠)
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