118 狐にとりつかれた話(花輪)
 
                    参考:鹿角市発行「花輪・尾去沢の民俗」
 
 昔、沼森さんというお家に来て、深夜、入口の戸をたたく人があったので、戸を開け
てみたら、男が米を一俵背負って立っていました。
「明日どうしてもお金が必要なので、米を置いて行きますので、明朝までにお金をお願
いしたいです」
と言って、どっしりと重そうな米俵を肩からおろしました。沼森さんという家は、広く
あきないをしている店のようですが、
「明日の朝までに米代金は用意しておくが、どこのどなたですか」
と聞いたら、
「○○村の○○です」
と答えたそうです。それで身元も確かなことだしと思っていました。
 
 ところが、次の日の朝に来るのかなあと待っていましたが、来ません。そして次の日
も……、何日たっても取りに来ないので、沼森さんはあきれて、○○村の○○さん方へ
連絡して、来てもらったが、
「うちでは米を背負って行った者がない。又そんなことをする筈がない」
と言われました。それで沼森さん方では、
「きっと狐が米を背負って来たものだろう………」
と話し合ったということです。それにつけても、その俵の中身は、正真正銘の上質のお
米だったそうです。
[次へ進む] [バック]