117 下新田の狐に化かされた話(尾去沢)
 
                    参考:鹿角市発行「花輪・尾去沢の民俗」
 
 昔は村に馬がたくさんいました。それで農閑期には、馬を放牧地の山に放し、又馬を
見張る番所である馬小屋をたてて、馬の晩をしていた頃の話だそうです。
 その頃、下新田の村に「ゲンジャ」と呼ぶ若者が住んでいました。この若者が、朝か
ら馬の見張り番をしていましたが、夕方になっても帰らなかったそうです。馬はみんな
帰ったのに、ゲンジャは帰らないので、村の人たちは、この若者を探すため太鼓をたた
いて、大声で叫びながら山中を歩いて探しましたが、見つかりませんでした。
 
 ところがその頃、ゲンジャは狐にだまされて、
「ボタモチだ」
と言って、馬の糞を食わせられ、山の中で一晩泊まって次の朝、すっかり蚊に食われて、
山人のようになって出てきたということです。
 下新田、中新田、上新田を含めた三ツ矢沢には狐が多く、鉱山の帰りや夜番の時には、
後からカチャ、カチャと音をさせて来るものでした。
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