6102白沢シラサワの荒神コウジンさま(大湯)
 
                    参考:鹿角市発行「陸中の国鹿角の伝説」
 
 大湯川の川上の方に白沢とか、大楽前オオラクマエとか、高崩タカクズレなどと云う村がありま
す。
 この村で、昔は村が三つで、二つの神さまを拝んでおりました。
 白沢では三宝サンボウ荒神さま、大楽前と高崩では小根津戸コネツドの龍神リュウジンさまを拝
んでいました。
 ところが、この神さま達は龍神さまと、荒神さまのために仲悪くて仲悪くて何時イツも
喧嘩ケンカばかりしているのでした。
 喧嘩が始まると、龍神さまは大雨を降らせて川に洪水を起こさせ、荒神さまは、石や
木を投げたり、崖崩れを起こさせたりして、三日も四日も喧嘩を続けているのでした。
 
 ある時、十和田の山へ修行に行く山伏ヤマブシが来ました。
 村の人達はあまり二つの神さまの喧嘩が続くために心配して、山伏さんに相談しまし
た。
「どうかして神さま達の喧嘩が無くなるようにならないだろうか、何とか良く拝んで下
さい」
と言って頼みました。
 山伏が言うには、
「龍神さまも、荒神さまも村のためにはとても為になるいい神さまだが、お前達が神さ
まを仲良くさせるためには、一緒に祀って、立派な神社を建てた方が良い」
と言いました。
 それから、高崩、白沢、大楽前の三つの村の人達は、みんな集まって相談して、白沢
の下の広い処に、今の荒神さんの処に立派に神社を建てて、祭りも三つの村で集まって
一緒にやるようになりました。
 その後、この三つの村では崖崩れや、洪水が無くなり、みんなが幸せに暮らすことが
出来るようになりました。
 
付言
 高崩や、大楽前や、白沢などは大湯川沿いで谷が深いため、何時も洪水や、崖崩れが
あって困ったものでした。その度に三つの村同志が喧嘩するものでしたために、まず神
社を建てて一生懸命拝めば、困ったときも仲良くなり、みんな力を合わせるようになる
と思って、山伏が教えたのでした。

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