6003天原アメハラの鬼の穴(草木)
 
                    参考:鹿角市発行「陸中の国鹿角の伝説」
 
 草木クサギの二本柳ニホンヤナギの上みに天原と云う処があります。
 其処ソコは大森山の麓フモトで、深い谷があって、其処へ行くときは天原の滝を渡るのにブ
ドウの蔓を登って渡って登り、抱き返りと云う怖い岩を越えてゆかなければなりません。
 この天原には、昔から鬼達が住んで居る鬼の穴があると言って、人が近寄らない処で
した。
 
 あるとき、草木の山子ヤマゴ(木を伐る人)達がこの沢に入って、薪マキを伐ったことが
ありました。
 山子達は、鬼の穴を見て初めは怖コワがって近寄らなかったが、段々慣れて来たために、
この鬼の穴に本当に鬼が居たら懲コらしめてやろうとして、山で伐った薪を鬼の穴に投げ
落として見ました。 そうしたら、薪は投げても投げてもボドンボドンと音がして下へ
落ちてしまうので、面白がった山子達は、穴がいっぱいになったら鬼達が逃げ出して来
るだろうと思って、どんどん投げ入れていたが、けれども、幾ら入れても、ボドンボド
ンと音がして何処に入ったのか、鬼の声もなく、薪ばかり落ちて行くのでした。
 とうとう、伐った薪をみんな投げ入れても、鬼も出て来なくて、薪ばかり無くなって
しまったそうです。
 
 山子達は驚いてしまって、この鬼の穴は幾ら深いものか、こんなに深い穴だと、鬼達
はたくさん居るかも知れないと思って、気味悪くなってしまいました。
 それで、伐った薪は一つも無くなった山子達は、気味悪くなったと言って、みんな逃
げて村に帰りました。それら後は誰も鬼の穴に近寄る人は居なくなりました。

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