5201五ノ宮ゴノミヤ皇子オウジ
 
                    参考:鹿角市発行「陸中の国鹿角の伝説」
 
 昔、継体ケイタイ天皇とダンブリ長者の一人娘の吉祥姫キチジョウヒメとの間に生まれた五番目
の皇子で、五の宮と云う宮様がいました。
 宮様は大した賢く、武芸も達者な人であったため、みんなに羨ウラヤまれていました。あ
んまり何でも出来るために、宮様を怨んで、悪口を言う人達がいました。
 そこで、宮様は世をはかなんで、母親を慕ってその故郷を目指して旅に出ることにし
ました。
 「私の心が引き留められた処を、住処スミカにしよう」
と考えながら、金丸兄弟と云う家来ケライを連れて、旅を続けました。そして北陸道を通り
抜けて、東国トウゴクに入って秋田の国に着きました。
 比内(北秋田郡)まで来たら、高い山が見えました。宮様はその山を見たら、気持ち
が惹ヒき付けられて、馬を急がせました。すると、乗っていた馬の鞍クラが二つに割れてし
まいました。割れた鞍の前輪マエワは、その晩にピカーッと光って東の方へ飛んで行きまし
た。小豆沢の東の山の中で、里の人はそれを見付けて、其処を鞍落場クラオチバと云うよう
になりました。後輪アトワは大里に残っていて、其処を尻鞍シリクラと云うようになりました。
 
 山の麓の根本と云う処に着いたら、宮様は、
「この高い山こそ、私が住むべき場所だ」
と、其処に馬を繋いで、山へ登って行ってしまいました。
 繋いだ馬は石になってしまいました。その石を縛駄石バクダイシと云って、今でも残って
います。お供の金丸兄弟も、一つの石になってしまいました。兄弟がなった石を一の皇
子(皇子石オウジイシ)と云って、これも今でも山の中にあります。
 
 その後、宮様の乳母メノトと云う人が夫婦で来て、宮様探しに山に登りました。そうする
と、乳母は独活ウドの殻で目を突いて、登ることが出来なくなりました。夫も宮様の行方
を見付けることが出来なくて、二人とも其処から戻りました。その場所を二人引フタリビキ
と云います。
 夫婦は麓へ下って、其処で石になってしまいました。夫婦石メオトイシと云う二つの石は、
一の皇子と薬師山ヤクシサンの間に、今でもあります。
 山奥に入った宮様は、死んでしまったのか、生きながらえているのか、人一人通わな
い高い山なので、行方を知る人は、誰もいなかったそうです。五番目の宮様が見えなく
なったその山を、五ノ宮と云うようになりました。
 
関連リンク 「八幡平地区の神様を訪ねて「小豆沢老人クラブ区域内の神様」」
 
[地図上の位置(五ノ宮神社)→]

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