5106鹿角を追われた八郎太郎
 
                    参考:鹿角市発行「陸中の国鹿角の伝説」
 
 男神と女神を堰止めて鹿角を湖にする気になって、集宮に集まった神様達に追われた
八郎太郎は、米代川をずっと下り、北秋田郡と山本郡の境にあるきみまち坂と、七座山
ナナクラヤマに挟まれて、狭くなっている米代川を堰止めて、また湖を作ろうとしました。
 これは大変だと思った北秋田や山本郡の神様達は、七座に集まって、
「どうにかして八郎太郎を追い出そう」
と言って相談しました。
 ところが、神様達がいくら相談しても、相手がおっかない八郎太郎故に、なかなか相
談がまとまりませんでした。それで呆れた神様達は、神様達の中で一番頭の良いとして
知られている、七座の天神さん一人に任せて、八郎太郎を追い払って貰うことにしまし
た。
 
 七座の天神さんはいろいろ考えて、八郎太郎を喚びました。
 「俺とお前とどっちが力強いか、力競べチカラクラベをしよう」
と仰オツシャって、石投げをさせました。そうしたら八郎太郎よりも天神さんが投げた石が、
遠くまで飛んで行きました。
 それで、力競べで負けた八郎太郎に、天神さんが仰いました。
 「此処は、八郎太郎お前の住むに狭くて駄目だ。もっとこの川を下って南の方へ行け
ば、うんと広い湖があるので、其処へ行った方が良いのだ」
と仰って教えました。
 
 ところが、そうして神様達が相談したり、力競べをしているうちに、八郎太郎は湖を
作ってしまいました。そこで天神さんは、これは大変だと思って、湖の土手に穴を掘る
役目を白鼠シロネズミ達に命じました。白鼠達は一生懸命になって穴を掘る気になりました
が、猫達が沢山集まって来て、白鼠を喰おうとしました。困ってしまった天神さんは、
猫達に、
「猫達、お前達に一年中蚤ノミを付けないようにするために、白鼠を捕らないように」
と仰って、猫達をみんな繋ぎました。其処は猫繋ぎであったが、今は小繋ツナギと云って
います。
 それから白鼠達は安心して土手に穴を空けると、土手がみんな崩れて川になりました。
その水に流されて八郎太郎は、南秋田と云う処の大きな湖に流れ着いて、其処に住み着
きました、その湖は八郎太郎が住んでいるために、八郎潟ハチロウガタと云うようになりまし
た。
 
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