51 謡曲「錦木ニシキギ」
 
「錦木」
(曲柄) 四番目(略二番目)
(季節) 九月
(稽古順) 三級
(所) 陸中国鹿角郡錦木村
(物語・曲趣) 陸奥狭布の里に、恋する男と恋される女がいた。所の習慣で、男は思
う女の家の門に錦木を立てる。錦木が取り入れられれば求婚が容れられたしるしである
が、容れられなければ錦木はそのまま門前に残される。
 
 主人公の男が三年通って立てた錦木の数は千本に及んだが顧みられず、女主人公はい
つも家の中で機を織りつづける。男は悲恋の結果、思い死してこの世を去ると、女も男
の執心にたたられてやがてこの世を去る。
 
 この世で添うことのできなかったふたりの遺骸は、同じ塚の下に千束の錦木と細布と
一緒に葬られ、その塚は錦塚と名づけられ、あわれな恋の語り草となった。
 
 恋慕の執心が旅僧の回向によって救われ、生前に遂げられなかった思いが妹背の逢瀬
を楽しむことが出来るようになるというのが、この曲の主題である。
 その悲しい喜びが、黄鐘早舞で表現されている。
 
※狭布の里=けふのさと。陸奥の歌枕として有名。仮説の地名。
 
(役別) 前シテ 男、 後シテ 男の亡霊、 ツレ 女、 ワキ 旅僧、 ワキツレ
従僧(二〜三人)
(所要時間) 五十分
 
[詳細探訪(錦木塚祭り)]
参考リンク[tanto's room]
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