05 石燈籠の種類
 
                    参考:誠文堂新光社発行「石燈籠新入門」
 
〈基本型の分類〉
 石燈籠の分類には、色々な方法が考えられます。例えば、
 造られた時代による − 鎌倉燈籠・室町燈籠
 造られた場所による − 岡崎燈籠・真壁マカベ燈籠
 大きさによる − 大燈籠・小燈籠
 石質による − 御影ミカゲ燈籠・出雲燈籠
 主要構成部分の平面形による − 四角燈籠・六角燈籠
 造った目的による − 献燈燈籠・庭燈籠
 設置場所による − 神社燈籠・庭燈籠
 模倣する場合の見本の所在地による − 橘タチバナ燈籠・春日カスガ燈籠
 模倣する場合の見本の原形に関係のあったと思われる人物名による − 珠光シュコウ形・利
  休リキュウ形
 同じく人物名と特異な形による − 織部オリベ形・利休形
 特異な形による − 草屋根形・雪見ユキミ形
 安置法による − 置燈籠・生込イケコミ形
などです。
 
 そして既述のように、石燈籠の歴史や構成状態からは基本型と変化型に大別出来ます。
それを更に分類すると、
 基本型では、主要構成部分の平面の形による方法が、最も分かりやすくまた一般的と
考えます。基本型は縦に高く積み重ねたものであり、横からみた場合(立面観)、基本
型である以上は大まかによく似た姿をしています。尤も、全構成部分を備えていても、
これが基本型かと、首を傾げたくなる立面観のものもあります。
 基本型石燈籠は、三角型・四角型・六角型・八角型・円型・不定形型に分けられます。
 
1 三角型
 三角型は実例が少なく、特殊な型タイプです。京都・清水寺成就院ジョウジュインにあるもの
は竿も宝珠も三角形です。なお、京都・桂離宮の三角雪見と云われているものは、構成部
分の関係上、変化型に属します。
2 四角型
 四角型は神社でよく見かける型で、概ね竿も四角形です。「お間アイ形」「西ノ屋ニシノヤ
形」と云われる竿の角柱状のものと、「神前形」と云われる竿の下開き(撥バチ形竿)の
ものと大別出来ます。なお、これには平面形の長方形や菱形のものも含めます。
3 六角型
 六角型は最も一般的な型で、「春日燈籠」と通称されています。「平等院形」「太秦
ウズマサ形」「白太夫シラタユウ形」「般若寺ハンニャジ形」など、六角型に属する石燈籠を表す名
称が沢山あります。竿の平面形は稀に六角形のものもありますが、原則として円形です。
4 八角型
 八角型は発生・展開など歴史的に、六角型に先行した考えられる型です。つまり四角形
の四隅を切ると八角形になることや、平安時代以前の石燈籠は殆ど八角形であったらし
い。鎌倉時代に、京都を中心とする地方に展開しました。この型の一種に、「当麻寺タイマ
デラ形」「柚ノ木ユノキ形」と云われるものがあります。
5 円マル型
 円型は三角型と同様、江戸時代以後のものです。基本型と雖も変型したものが多く、
基礎だけ四角形だったり、火袋だけ六角形だったりするものもよくあります。「八幡形
」と云われるものがこれに属します。
6 不定形型
 不定形型は、寄せ集めでなく、意識的に主要構成部分を四角・六角・八角・円などバラバ
ラにしたものを指します。三角型より特殊ですが、稀にあります。
 また自然石を燈籠の形に積み上げたものも、火袋その他の構成部分を完備している限
り基本型石燈籠です。この平面型は、自然石のままですから何とも定まりません。従っ
て主要構成部分を故意に違わせたものと若干違いますが、一応この型に入れます。
 
 以上の他、石燈籠によく似た形の石幢セキドウの龕部ガンブに穴を穿って火袋にし、容易
に石燈籠に改良したものもあります。この型には京都・善導寺の瑪瑙メノウ燈籠が有名で、
関東地方の古石燈籠とされるものの中によく見かけます。
 基本型である限り、以上六つの何れかに分類出来ます。
 
〈変化型の分類〉
 火袋以外の構成部分を必ずしも具備せず、たとえ具備していても、大なり小なり変形
しているのが、変化型石燈籠です。基本型が変化して出来たものですので、基本型に後
進し、主として庭園に用いられています。平面形はおろか立面が既に区々マチマチなので、
立面に重点を置き、構成や全体の形や安置方法を加味して、変化型石燈籠は、生込型・脚
付型・層塔型・置燈籠型・変形型・寄せ燈籠・山燈籠に分けられます。
 
1 生込イケコミ型
 生込型は基礎がなく、竿に当たる構成部分の下部を直接地中に生け込んで立てる型で
す。立てる場所によって臨機応変に高さを調節します。生け込むので、主体部の重さの
関係もあり、また竿なども多少変形しています。平面円形のものが多く、四角の「織部
形」の多くはこれに属します。
 なお、道標に火袋を穿ったような「道識ミチシルベ形」は、生け込んで立てますがこの型
とは考えません。
2 脚付アシツキ型
 脚付型とは、基礎と竿の代わりに、一本から数本の脚のある型です。最も多いのは四
脚付で、その多くは「雪見形」と云われています。次が二脚付で、脚の形が琴柱のよう
なので「琴柱コトジ形」と呼ばれます。一脚付は弓形の脚を付けるもので、「蘭渓ランケイ形
」と云われます。脚付型の平面は四角・六角・八角など色々で、特徴は一般に背が低いこ
と、笠が大きいこと、火袋の側面を全て火口にすることなどです。
3 層塔型
 層塔型とは火袋と笠を積み重ねて、三重塔・五重塔のような形にしたものです。頂上に
は塔のように相輪ソウリンを立て、下部は雪見形のような四脚になっているものが多い。ま
た、二層以上の、火袋に当たる部分(層塔の軸部)が、火袋になっていないものもあり
ます。
4 置燈籠型
 置燈籠型は基礎も笠も無く、直接地上或いは石の上に置く型です。釣燈籠のように小
さい脚と宝珠のあるもの、火袋と笠だけのもの、火袋だけのものなど様々です。平面形
も四角(長方形も含む)・六角・八角など様々です。特に平面立面とも円形で纏まったも
のに「手鞠テマリ形」の名があります。
5 変形型
 変形型とは、以上のどれにも当てはまらないような特異な形のものです。「袖ソデ形」
「瓜実ウリザネ形」「道識形」「朝鮮形」などと云われるものは、皆これに属します。火袋
以外の、笠さえ確認出来ない程変形したものもあり、最近の創作石燈籠やオブジェ石燈
籠なども含みます。既成石造物の廃品を利用したもの、或いは廃品利用に見せかけたも
のもあります。
6 寄せ燈籠
 寄せ燈籠は、石燈籠・石塔類などの構成部分や断片を寄せ集めて組み立てたものです。
火袋を作るためや、形を整えるために一部加工されることもあります。
7 山燈籠
 山燈籠とは「化け燈籠」とも云い、自然石を集めて石燈籠の形にしたものです。山燈
籠の中には火袋に当たる部分があっても、点灯施設のないものもありますが、このよう
なものは石燈籠の中に入れるべきでないと考えます。ただし、既述のように一応構成部
分を完備するものは、基本型の不定形に入れます。
 以上変化型の分類は、主として立面観によるものによるものです。
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