51 風土記とは
 
                         参考:岩波書店発行「風土記」
                            堀書店発行「神道辞典」
 
[風土記フドキとは]
 
 特定の「風土記」とは、元明ゲンメイ朝の和銅六年(713)の中央官名に基づいて、地方
各国庁で筆録編述した所名事項の報告文書と云う意味での風土記と云うことです。成立
の事情、年代及び内容がこの官命によって一応規定せられている風土記なのです。『続
日本紀』同年五月甲子(二日)の条に、
 
 畿内七道諸国。郡郷名著好字。其郡内所生銀銅彩色草木禽獣魚虫等物具録色目。及土
 地沃脊(土扁+脊)。山川原野名号所由。又古老相伝旧聞異事。載于史籍言上。
 
とあります。此処に命じている事項は、即ち次の五項目です。
(1) 郡郷の名(地名)には好字(漢字二字の嘉き字)を著ける
(2) 郡内の産物(農工以外の自然採取物)について色目(物産品目)を録する
(3) 土地(農耕地又は農耕可能地)の肥沃状態
(4) 山川原野(自然地)の名称の由来
(5) 古老の相伝する旧聞異事(伝承)
 
 『日本書紀』に拠りますと、履中朝四年に「始之於諸国置国史、記言事達四方志」と
見えるのが地誌的記録を中央で求めた最初の記録であり、和銅以前における広範な地方
誌製作の唯一の記事です。履中朝は記紀的な古代史の体系から云っても、大和朝廷によ
る最初の日本国家統一後の建設期に当たります。履中期は地誌製作の行われて然るべき
最初の時期であったと云えますし、和銅は地方誌編述の行われて然るべき第二の時期で
あったと云うことになります。
 
〈現伝風土記及び逸文の書誌〉
(1) 出雲国風土記
 巻首の総記と各郡記と巻末記の三部を共に存する唯一の完本で、巻末に公文書の書式
を整え、計数記載が精しく、編輯はよく行き届いています。
(2) 播磨国風土記
 巻首とそれに続くべき明石郡の記事を欠損して、賀古以下十郡の記事を伝えています
が、赤穂郡の記事は全く存しません(逸文に明石郡の記事がある)。
(3) 常陸国風土記
 巻首の総記と行方郡の分とは「不略之」と注しており、他の新治・筑波・信太・茨城
・香島・那賀・久慈・多珂は各所で省略せられ、白壁・河内二郡の記事は全く存しませ
ん。
(4) 豊後・肥前国風土記
 両国共に巻首と各郡首とは揃っていますが、各郡の記事は甚だ乏少な不完備のものし
か伝わっていません。
(5) 風土記逸文
 まとまった形で現存しているのは、前記五風土記だけで、その他は古書に引用された
「逸文」として知られています。逸文の採集は、江戸時代になってから始められました。
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