203 遊戯考[八道行成・小弓]
 
                       参考:吉川弘文館発行「古事類苑」
 
[八道行成ヤサスカリ]
其の法詳ならず、今の十六むさしの類なるべし。
十六むさしは、また十六さすかりとも云ふ。
其の法、十六の士卒、一力士を中央に囲みて之を攻む。
力士は八道に行き、二子の間を覘ウカガひ、直行して左右を屠り、遂に行道に障碍なきに
至るを以て勝とし、士卒は力士を窮遂して、逃ぐること能はざらしむるを以て勝とす。
 
むさしの一種、地上に大路小路の形を画き、此に銭を投じて輸贏シュエイ(勝負)を争ふも
のあり。
また六むさしあり、碁子白黒各三を以てし、九舎を走り、同士相連なるを以て勝とせり。
 
[牽道ミチクラベ]
八道行成の類なりと云ひ、或は競争の義なりとも云ひて詳ならず。
 
[小弓コユミ]
小弓は、古く高貴の間に翫ばれたる遊戯にして、毎に小弓会ありき。
 
山風のまつよりふけばこの春の やなぎの糸はしりへにぞよる
かへし
かずかずにきみがたよりてひくなれば 柳のまゆも今ぞひらくる
                             (蜻蛉日記 中之上)
 
あづさ弓いてもかひなき身にしあれば けふのまとゐにはづれぬるかな(贈法印慈応)
返し
あづさゆみ君しまとゐにたぐはねば ともはなれたる心ちこそすれ(道命法師)
                           (新拾遺和歌集 十九雑)
 
これをみておもひもいでよ浜千鳥 跡なきあとを尋けりとは
返し
はま千鳥跡なきあとを思ひいでて たづねけりとも今日こそはしれ
                             (続世継 五浜千鳥)
 
おもひいづるときもあらじとおもへとて やといふにこそおどろかれぬれ
                      (蜻蛉日記 上之上 後拾遺和歌集)
 
あづさ弓さこそはそりの高からめ はるほどもなくかへるべしやは
                        (金葉和歌集 九雑 藤原時房)
 
春ふかき山にいればや梓弓 ふく風にさへ花のちるらん(源順集)
 
[雀スズメ小弓]
雀小弓は、雀を糸にて括り、小弓を以て之を射る。
中てたる者は、其の雀を得るなり。
 
しのためてすゞめ弓はるをのわらは ひたひゑぼしのほしげなるかな
                      (夫木和歌抄 三十二弓 西行上人)
 
[破魔弓ハマユミ]
破魔弓は、正月小児小弓を以て的を射る戯なり。
後には射る事は廃れて、年始の祝儀にのみ用ゐたり。
原と厭勝エンショウ(呪マジナい)の為に行ふ所なりと云ふ。
 
[楊弓ヤウキウ・]
楊弓は、小弓の類にして、初は楊を以て造れりと云ふ。
或は云ふ、唐玄宗の楊貴妃が、未央宮の楊を截キりて之を造りしに起れりと。
此技は、我国にては応永以後の書に見えて、盛に宮掖キュウエキ(宮廷)の間に翫ばれ、七夕
七遊の一たり。
後世専ら俗間の戯となる。
 
[吹矢フキヤ]
吹矢は矢を筒に入れ、口気を以て之を吹き、小鳥等に吹き中つるものなり。

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