201 遊戯考[双六]
 
                       参考:吉川弘文館発行「古事類苑」
 
                    本稿は、吉川弘文館発行「古事類苑/遊戯
                   部」を参考にさせていただきました。往古よ
                   り江戸時代までの、日本人の「遊び(ゲーム
                   )」について、その歴史、由来、遊び方など
                   の概略、併せてその遊戯に関わる和歌をご紹
                   介します。            SYSOP
 
[双六スゴロク]
双六は「スグロク」と云ふ、後に訛りて「スゴロク」と云ふ。
支那より伝来せしものにて、盤上の戯中最も古きものなり。
持統天皇の三年に之を禁断せしことあれば、当時既に盛に行はれしこと知るべし。
双六には、仏法双六、官位双六の類あり。
紙を以て盤と為し、文字又は絵画を用ゐたるものにて、児童婦女の戯玩に供するものな
り。紙双六とも云う。
 
一二ヒトフタの 目のみに有らず 五六イツツムツ 三四ミツヨツさへも 双六スグロクのさえ
                         (萬葉集 十六有由縁并雑歌)
 
大芹
おほぜりは くにのさたもの こぜりこそ ゆでゝもうまし これやこの せんばん 
さんたのきの ゆしのきのばん むしかめのどう さいかくのさい ひやうさいとさい
りやうめん かすめうけたる きりとほし かなはめばんぎ 五六がへしの 一二のさ
いや 四三のさいや(催馬楽)
 
一か二かめも消はつるつぶれざい それだにみゆる秋のよの月(中略)
ねたやげにかたづきしたるえせざいの かくかひもなきめをもみる哉(七十一盤歌合)
 
吾妹児が 額ヒタヒに生オふる 双六の 事負コトヒの牛ウシの 倉の上の瘡カサ
                         (萬葉集 十六有由縁并雑歌)
 
すぐろくのいちはにたてるひとづまの あはでやみなん物語にやはあらぬ
                    (拾遺和歌集 十九雑恋 よみ人しらず)
 
双六調度
黒白の争ひきほふ双六に よしあし六の道やわきけむ(法隆寺宝物和歌)
 
[攤ダ・ダウチ]
多くは移徒、産養、庚申、饗宴等の時に行ふ所にして、
其の法、数人にて紙を賭け、各々筒賽を擲ナゲて、貴賽を得たるものを以て勝と為すが如
し。
然れども其の詳なるに至りては、今之を知る由なし。
 
[意銭ゼニウチ]
銭を地上に投じて、勝負を争ふ戯にして、
其の法詳ならざれども、後の「穴一アナイチ」の類なるべし。
穴一は、地上に銭大の穴を穿ち、此に銭を投入したるものは其所得とし、外づれたるも
のは、更に他の銭を以て、敵の指示する所に随て之を撃ち、中つれば勝とし、中らざれ
ば負とす。
穴一の類に、無患子ムクロジ打(むくだ・むくろんげ)、面打(めんてう・めんち打)、紋
打等あり。

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