06 客の心得
 
                         参考:保育社発行「茶道入門」
 
                     本稿は、一般人たる私共が「茶の湯」の
                    客として招待されたときの「心得〜作法」
                    について、素人のSYSOPが頭書の参考書によ
                    り記述してみたいと思います。
                     茶会の規模により、当然に以下の幾つか
                    の項目が省略されることがあります。
                     文中、解釈の間違いなどありましたら、
                    恐れ入りますがご指摘下さい。  SYSOP
 
△茶会の招待
 茶会を催して、お手前をする人を亭主と云い、男女を問わない。
 茶会に招待された人を客と云う。
 招待されたならば、時機を失しないように出欠の意思表示をする。
 
 茶会当日、時刻よりも20〜30分前に、亭主の居宅(又は指定する建物)の玄関に至り、
衣服を改めたり、足袋を履き替えたりする。服装は、男は十徳、女は着物(和服)を着
用することが原則であるが、洋装でも差し支えないとされている。ただし、女の場合は、
ズボンのようなものは好ましくない。なお、十徳とは僧侶の衣服に由来し、江戸時代に
は儒者・医師・絵師などが外出に用いた。
 
 玄関の近くには、「寄付ヨリツキ」と云う部屋が用意されている。客は寄付に入り、他の
客と共に亭主の指示を待つ。
 
△露地
 時刻、亭主の指示があったら、客は竹皮を二重に編んだ「露地ぞうり」を履く。雨天
のときは、赤杉の柾で竹皮の鼻緒のついた下駄を履き、竹皮で作った一文字笠(露地笠)
を片手にかざす。
 
 客は、寄付を出て露地へと進む。露地の通路には飛石が敷かれており、その飛石を伝
って茶室へと向かう。
 露地を歩くときは、飛石の上を一つ一つ踏みながら進み、飛石から踏み外さないよう
に注意する。
 途中、拳大の丸い石がわらび縄で十文字に縛って、飛石に置いてある場合がある。そ
の石を関守石と云い、そこは通路の分岐点であり、関守石のある方へは入らないように
と云う意味である。
 
 茶室は普通、居宅から離れて独立して建てられている。居宅と茶室を結ぶ通路を「露
地」と云う。露地の途中に「中門チュウモン」が設けられ、外露地と内露地とに分けられる。
中門は、結界の役割を果たしているのである。
 外露地には、腰掛け待合が設けられ、ここで客は腰を掛けて亭主の案内を待つ。
 
 茶室の準備が調うと、亭主は内露地から中門を開いて、客を迎えに出てくる。これを
「迎いつけ」と云う。迎いつけは、無言でただ一礼するだけである。客はそれに応じて、
腰掛けから立ち上がり、やはり無言で一礼する。
 
 亭主が内露地へ去るのを見送ってから、上客から一人ずつ内露地へと進む。先頭は上
客、即ち正客ショウキャクから順次に列を組み、末客をお詰ツメと云い、お詰は中門をくぐると、
中門の扉を閉じる。
 
 石燈籠の火袋の窓には障子がはめられ、火が点っている。火を点さない昼間は、障子
がはずされている。
 途中、茶室に近い所に蹲踞ツクバイ(手水鉢チョウズバチ)がある。客は蹲踞につくばって手
水をつかう。即ちまず柄杓で一杓水を汲んで両手を洗い、次に左手に水を受けて口をす
すぎ、柄杓を立てるようにして柄を洗って、柄杓を戻す。手水は、心身を清めるために
行う。
 
△躙り口ニジリグチ
 躙り口とは、客室への出入り口である。大きさの標準は、高さ二尺二寸、幅二尺一寸
である。客は沓ぬぎ石の上につくばい、躙り口の板戸を開け、頭からにじるようにして
茶室へ入る。躙り口をくぐることによって、雑念を取り払い、無心となることが出来る。
 中に入ったら、自分の草履をとって、裏と裏とを重ね合わせて、沓ぬぎ石の辺りの壁
に立てかける。
 なお、外露地の腰掛け待合や躙り口の柱には、掃除用のわらび箒が掛けてあることが
ある。
 
△茶室 − 拝見
 正客は、床の間の前に進み、扇子を膝前に置いて、軽く一礼して、掛け物を拝見する。
掛け物は、その日の茶会の趣旨を表すものとされている。そして花入を拝見し、花を観
る。
 次に道具畳の方へ進み、炉、釜を拝見し、棚なども観て、控えて座する。
 他の客も順次、床の間などを拝見する。
 全員が見終えると、正客から順次に所定の座に着き、亭主を待つ。
 
△茶室 − 菓子を取る
 主菓子は、一人一人の客に、縁高フチダカに入れて出されるのが正式である。
 縁高は普通五つ一組で出され、正客から順に、客は下の方から取って、次客へ回す。
 客は懐中紙を取り出して膝前に置き、縁高に添えてある黒文字で、菓子を懐中紙の上
に取る。
 菓子鉢のときは、菓子は客の数だけ菓子が盛られ、また黒文字が添えられている。
 
 干菓子は、盆に二種類ほどが、客の数より二三個多く盛り合わされ、箸が添えられて
いる。客は懐中紙を取り出して、箸で菓子を取る。取り終わったら紙の端で箸を拭い、
箸を戻す。
 
△茶室 − 菓子を戴く
 次客が主菓子を取る頃、正客は干菓子を膝前に取って、
「とりどりに戴きます」
と亭主に挨拶してから、器を軽く頂き、指で干菓子を取る。二種類盛られていれば、手
前の方から取って、主菓子を載せた紙の上に載せる。器を拝見するときは、両手に取っ
て拝見し、盛られている菓子が乱れないように注意する。
 
 お菓子を取るとき、亭主から、
「お菓子をお取り下さい」
の挨拶があるときもあり、無いときもある。取る頃合いは、亭主がお茶を茶碗に入れる
ために茶杓を取った頃で、正客が、
「戴きます」
と挨拶して取る。
 お菓子を次客へ回したら、すぐに食べてよい。
 
 お菓子を載せた紙をそのまま手に持ち、添えられた黒文字で適宜に切り割って食べる。
もし黒文字が添えられていないときは、自分の懐中から楊子などを取り出して、それを
用いる。
 お菓子は、お茶が出されるまでに食べればよい。もし食べきれなかったときは、紙に
包んで膝の横に置き、そして後で持ち帰る。
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