03 茶室
 
                茶室
 
                         参考:保育社発行「茶道入門」
 
〈茶室〉
 
 茶室とは,茶事を行うための室の呼称で,それに伴うあらゆる建築的施設をも含めて,
茶室建築又は単に茶室と云われます。茶室のほかに,茶席,数寄屋スキヤ,囲カコいと云う名
称もありますが,今日においては,茶室と云う呼び名が最も普及しています。茶室は,
作者それぞれの茶風や意図によって組み立てられるものですから,その在り方は,実に
様々ですが,大体の傾向を分けますと,草庵式茶室と,書院式茶室の二つになります。
また四畳半を基準にして,それ以上広い茶室を広間,それ以下の狭い茶室を小間コマとし
て区別しています。そして書院式茶室は,この広間の方に属します。小間の場合は,畳
の数やその敷き方によって,三畳台目ダイメ,二畳中板ナカイタ,一畳台目向板ムコウイタ,平ヒラ四
畳,深フカ三畳などの名称が付けられます。また更に炉の切り方によって,向う切キリ,隅
スミ炉,台目切,出炉デロ,逆勝手ギャクカッテ切などの名称があり,床の付けられている位置
によっても,上座床ジョウザドコ,下座床ゲザドコなどと呼ばれます。
 
△躙り口ニジリグチ
 普通草庵式の茶室には,客が庭から出入りする入口が付けられていますが,それを躙
り口と云って,人一人が頭を下げて,潜って入れる程度の入口です。
 
△茶道口チャドウグチ
 内部の,主人が点前のために出入りする入口を茶道口と云います。
 
△給仕口キュウジグチ
 茶室の好みによって,その茶道口と別に,もう一つの出入り口が造られていますが,
これを給仕口と称しています。
 
△水屋ミズヤ
 茶屋に付属して水屋があります。普通板の間で,竹の簀の子スノコの流しがあり,その上
に幾つかの棚が作られています。点前に必要な茶道具,水などを準備して置く処で,一
般の住宅の台所に当たる処です。中には,茶室の炉や風炉フロに掛けた釜の湯を補うため
に,水屋にも炉が切ってあって,常に湯を沸かして置くようになっているものもありま
す。
 
〈露地〉
 
 茶室に付属した庭を露地ロジと称しています。「火宅カタクを出でて白露地に座す」と云
う経典の中の一節から出ていると云うことですが,火宅は俗世界であり,白露地は清ら
かな仏の世界と云うことになります。茶屋は俗世界を離れた仏の世界であると云う考え
から,その清澄な世界に入るために,まず清らかな露地を歩む,と云うために,庭とは
云わず露地と称したのです。
 露地は,内露地ウチロジと,外露地ソトロジの二つに区分され,その境に中門チュウモンと称し
て,竹の枝折戸シオリドか,簡単な門が造られています。この門を中心に,茶室に近い方を
内露地,その反対を外露地と云います。
 露地には,通路のために飛石が置かれています。歩きやすい程度に間を置いて,手頃
な石が,茶室の方へ配置されているので,その石の一つ一つを踏んで行けば,自ずから
茶室へ行き着けるのです。
 露地の所々に石燈篭が配されます。
 
△蹲踞ツクバイ
 茶室に近い処に,蹲踞があります。蹲踞は手水鉢チョウズバチのことですが,その間に蹲
ツクバって手水を遣うように,低く据えられています。
 
△腰掛け待合マチアイ
 露地にあって,客はこの腰掛けに掛けて,主人の出迎えを待つのです。また茶事など
の場合は,懐石と点前との中間に,露地に出てこの腰掛けで休息するのです。
 
△雪隠セッチン
 露地の添景物テンケイブツとしては,腰掛け待合のほかに,下腹カフク雪隠と砂雪隠とがあり
ます。下腹雪隠は外露地の腰掛け待合の側にあって,実際に使用できます。砂雪隠は内
露地にあって,貴人用ですが,殆ど使用することがないので,飾り雪隠とも云われてい
ます。昔の宮中などに設けられていた,使用後砂で処理するようになってる便所です。
 露地には,華やかな花の咲く木は植えません。主として常緑樹を植えます。石燈篭は
飾りだけではなく,夜の茶会には,燈篭に火を入れます。この場合には,火袋に障子を
嵌めますが,火を入れないときには,障子は外して置きます。
 
〈待合〉
 
 待合マチアイは,寄付ヨリツケとも袴着ハカマツケとも云います。玄関に近い一室がそれに当てられ
ます。客はまずこの待合に通され,衣服の乱れを正したり,足袋を履き替えたりして,
他の客が揃うのを待ち合わすのです。待合は,別に茶室でなくても良いので,この頃で
は,洋間を待合に使用したりします。客が揃いますと,この待合から露地に下りて,腰
掛け待合において,主人の出迎えを待つのです。
 
〈畳〉
 
△寸法
 茶室に用いる畳は,昔から寸法が定まっています。現在わが国において用いている畳
は,田舎間イナカマと京間キョウマの二種です。尤も最近では団地間と云う住宅団地の和室に併
せて作られた特別の寸法の畳も出来ています。茶室の畳は京間に限られます。京間の寸
法は,長さ6尺3寸,幅3尺1寸5分です。棚とか,風炉先屏風,その他の茶器類の殆
どが,この京間の寸法によって作られています。更に点前をするときの歩き方,座る位
置,その他の動作が,全て京間の寸法に合わせて決められていますので,この京間の畳
が絶対的条件となります。
 しかし,近代建築の殆どが,田舎間(関東間)の寸法によって造られていますので,
前述の作法の決まり(動作)は順次改められることになりましょう。

  △名称  茶室内の畳には,一枚一枚名称が付けられています。例えば貴人畳とは位クライのある人 が座るのですが,それは特別の場合で,普通は客畳として使用されます。踏込フミコミ畳と は主人が点前をするために,茶道口から茶室へ第一歩を踏み込む畳と云う意味です。大 勢の客のときは,客畳だけでは座りきれないので,この場合は客は踏込畳に座っても良 いが,主人が茶道口の出入りに邪魔にならないように,半畳程度は空けて置きます。道 具畳は,主人が点前をする処です。

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