09a 楽舞考[芝居・浄瑠璃・操人形・小唄・舞・踊]
[舞マヒ]
舞は、音楽の節奏又は歌謡の調子に合はせて、両手を主として凡て身体を動し、種々の
容態を為し、演舞するを云ふ。
舞には国風の舞あり、外国伝来の舞あり、近世に至りて俗楽の舞あり。
舞の名目に久米舞、楯舞、田舞、倭舞、吉志舞、獅子舞、延年舞、男舞、女舞等の類あ
り。
久米舞
うだのたかきに しぎわなはる わがまつよ しぎはさよらず いすくはし くぢらさ
より こなみが なこはさば たちそはのみの なけくを こきしひゑね うはなりが
なこはさば いちさかきみの おほけくを こきだひゑね
かむかぜの いせのうみの おほいしにや いはひもとへる しただみの しただみの
あごよ あごよ しただみの いはひもとへり うちてしやまむ うちてしやまむ
おさかの おほむろやに ひとさはに いりをりとも ひとさはに きいりをりとも
みつみつし くめのこらが くぶつつい いしつついもち うちてしやまむ
いまはよ いまはよ ああしやを いまだにもあごよ いまだにもあごよ
えみしをひとり もものひと ひとはいへども たむかひもせず
たたなめて いなさのやまの このまゆも いゆきまもらひ たたかへば われはやゑ
ぬ しまつどり うかひがとも いますけにこね
みつみつし くめのこらが かきもとに あはふには かみらひともと そのがもと
そねめつなぎて うちてしやまむ
みつみつし くめのこらが かきもとに うゑしはじかみ くちひびく われはわすれ
ず うちてしやまむ(日本書紀 三神武)
倭舞
神風やみもすそ川のさゝ浪に 声をあはする夜はの糸竹(倭訓栞 前編三十四也)
しもとゆふかづらき山に降雪の まなく時なくおもほゆる哉
(古今和歌集 二十大歌所御歌)
同 梅枝
野もやまもゆきはふれるを神がきに のみひとはなうめはさけり
真榊
みかさやましげるたかねのまさか木を なかとりもちてわれぞまはまし
又
三かさやまみねのまさかきをりかざし よろづよまでもつかへまつらむ
常世
あぐらゐのかみのみ手もちひく琴に まひするをみなとこよにもがも
計歌
ひとふたみよいつむゆなゝやこゝのたり もゝちよろづ
一歌
とほつおやに 習ひはべるか あそぶ子ら うたならひ ふむふくこ たがこなるらむ
二歌
しろがねやこがねのうめがはな咲や 神のとのともひらかざるらむ
三歌
かすがやま松のひゞきもやすみしゝ きみがちとせをなほよばふらし
又
しもとゆふかつらぎ山にふるゆきの まなくときなくおもほゆるかな
四歌
みやびとのおほよすがらにいざとほし ゆきのよろしもおほよすがらに
五歌
みやびとのさせる榊をわれさして よろづよまでにつかへまつらむ
六歌
みやびとのこしにさしたる榊をば われとりもちてよろづよやへむ
七歌
そらみつやまとの国はかみがらし たふとくあるらし此舞みれば
八歌
ふちも瀬もきよくさやけしはかまがは ちとせをまちてすめる川かも
幣歌
みてぐらにならましものをすめ神の みてにとられてなづさはるべく
又
みてぐらはわがにはあらずあめにます とよをか姫のみやのみてぐら
御饌歌
みかま木を いはひとりきてかしぎやに とよみけかしぐおともとゞろに
又
みかのはらにみてならべたるとよみけの とよかしぐおとはかみもとゞろに
御酒歌
このみきはわがみきならずやまとなる おほものぬしのかみしみきなり
又
さかどのはひろしまひろしみかこしの わがてなとりそしかつげなくに
立歌
いざたちなむ をしのかもとり みづまさらば とみぞまさらむ
又
すめ神はよきひまつればあすよりは あけのころもを褻ころもにせむ
直会歌
あはれ あなおもしろ あなたぬし あなさやけ於介
志多良歌
しだらうてと てゝがのたまへば うちはンべり ならひはンべり
あこめの袖 やれてはンべり おびにやせむ たかのをにせむ(以上、倭舞歌譜)
みなづきのおゝよそ衣ひざつきて よろづよまでもかなであそばむ
みやびとのさせるさかきを我さして よろづよまでにかなであそばむ
大宮の 戸影にきゐる おきの鳥 それをみて そらの荒たか とびかけるめり
大宮のちぎにおひたるやまかさぎ よろづよちよにつかへまつらむ
(建久三年皇大神宮年中行事 六月)
[踊ヲドリ]
踊(躍とも)は、舞より分れたる踏舞にして、俗曲の音楽歌謡の調子に合せて之を為す
ものなり。
踊念仏
出てゆかば心くるしとわらはれん 世のほうさいを人のしらねば
人はみなさいはうとこそ願ひしに さかさまことぞほうさい念仏(世事百談)
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