03 楽舞考[大歌]
 
[大歌オホウタ]
大歌は、我国古来の歌謡中、風調雅正なるものを採りて、鼓吹に合せて奏楽し、朝会公
儀等の時に用ゐしものなり。
大歌はまた、神楽歌、催馬楽の如きものを云ふ。
大歌所は、大歌の歌曲を掌る所にして、親王、大納言、非参議、六位の人を以て別当に
補す。また和琴歌師、十生、案主等の職員あり。
 
歌曲夷振ヒナブリ
阿妹アモなるや おとたなばたの うながせる たまのみすまるの あなだまはや みた
にふたわたらす あぢすきたかひこね
あまさかる ひなつめの いわたらすせと いしかはかたふち かたふちに あみはり
わたし めろよしに よしよりこね いしかはかたふち(日本書紀 二神代 一書曰)
 
あめなるや おとたなばたの うながせる たまのみすまる みすまるに あなだまは
や みたにふたわたらす あぢしきたかひこねの かみぞや(古事記 上)
 
宮人振ミヤビトブリ
みやびとの あゆひのこすず おちにきと みやびととよむ さとびともゆめ
天田振アマダブリ
あまとぶ とりもつかひぞ たづがねの きこえむときは わがなとはさね
                              (古事記 下允恭)
 
近江振アフミブリ
あふみよりあつたちくればうねののに たづぞ鳴なる明ぬこのよは
水茎振ミヅギクブリ
水くきのかのやかたにいもとあれと ねてのあさけの雪のふりはも
四極山振シハツヤマブリ
しはつ山打出てみればかさゆひの 島こぎかくるたななしの小舟
                        (古今和歌集 二十大歌所御歌)
 
思邦歌クニシヌビウタ
はしきよし わぎへのかたゆ くもゐたちくも やまとは くにのまほろば たゝなづ
く あをがきやま こもれるやまとし うるはし いのちの まそけむひとは たゝみ
ごも へぐりのやまの しらかしがえを うずにさせ このこ(日本書紀 七景行)
 
思国歌
やまとは くにのまほろば たゝなづく あをかきやま こもれる やまとし うるは
し
いのちの またけむひとは たゝみごも へぐりのやまの くまがしがはを うずにさ
せ そのこ
片歌
はしけやし わぎへのかたよ くもゐたちくも(古事記 中景行)
 
酒楽サカホガヒ歌
このみきは わがみきならず くしのかみ とこよにいます いはたゝす すくなみか
みの かむほぎ ほぎくるほし とよほぎ ほぎもとほし まつりこし みきぞ あさ
ずをせささ
答歌
このみきを かみけむひとは そのつづみ うすにたてゝ うたひつゝ かみけれかも
まひつゝ かみけれかも このみきの みきのあやに うたゞぬしさゝ
                              (古事記 中仲哀)
 
本岐歌ホギウタ
たまきはる うちのあそ なこそは よのながひと そらみつ やまとのくにに かり
こむと きくや
たかひかる ひのみこ うべしこそ とひたまへ まこそに とひたまへ あれこそは
よのながひと そらみつ やまとのくにに かりこむと いまだきかず
片歌 
ながみこや つひにしらむと かりはこむらし(古事記 下仁徳)
 
天語歌アマコトウタ
まきむくの ひしろのみやは あさひの ひでるみや ゆふひの ひがけるみや たけ
のねの ねだるみや このねの ねばふみや やほによし いきづきのみや まきさく
ひのみかど にひなへやに おひだてる もゝだる つきがえは ほつえは あめをお
へり なかつえは あづまをおへり しづえは ひなをおへり ほつえの えのうらば
は なかつえに おちふらばへ なかつえの えのうらばは しもつえに おちふらば
へ しづえの えのうらばは あのぎぬの みへのこが さゝがせる みづたまうきに
うきしあぶら おちなづさひ みなこをろ こをろに こしも あやにかしこし たか
ひかる ひのみこ ことのかたりごとも こをば
やまとの このたけちに こだかる いちのつかさ にひなへやに おひだてる はび
ろゆつまつばき そがはの ひろりいまし そのはなの てりいます たかひかる ひ
のみこに とよみき たてまつらせ ことのかたりごとも こをば
もゝしきの おほみやひとは うづらとり ひれとりかけて まなばしら をゆきあへ
にはすずめ うずすまりゐて けふもかも さかみづくらし たかひかる ひのみやひ
と ことのかたりごとも こをば
宇岐歌
みなそゝく おみのをとめ ほだりとらすも ほだりとり かたくとらせ したがたく
やがたくとらせ ほだりとらすこ(古事記 下雄略)
 
大直日歌オホナホヒノウタ
新しき年の始にかくしこそ 千年をかねてたのしきをへめ
ひるめのうた
さゝのくまひのくま川に駒とめて しばし水かへかげをだにみむ
                        (古今和歌集 二十大歌所御歌)
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