40 井・泉・温泉・河・湖を詠める和歌
 
                       参考:吉川弘文館発行「古事類苑」
 
△井
あしひなる栄えし君が穿ホりし井の 石井イハイの水は飲めどあかぬかも(萬葉集 七雑歌)
 
つゝ井づのゐづゝにかけしまろがたけ すぎにしけらしないもみざるまに
                                (伊勢物語 上)
 
つゝ井つのゐづゝにかけしまろがたけ すぎにけらしも君見ざるまに(袖中抄 三)
 
おちたぎつ走井ハシリイの水の清ければ わたりは吾れはゆきがてぬかも(萬葉集 七雑歌)
 
△泉・清水
里人のくむだに今はなかるべし 岩井のしみづみくさゐにけり
                       (後拾遺和歌集 十八雑 大江嘉言)
△温泉・塩湯
磯なつむ入江の浪の立ちかへり 君みるまでの命ともがな
                         (金葉和歌集 九雑 平康貞女)
 
長居する蜒アマのしわざと見るからに 袖の裏にもみつ涙かな(同 むすめ)
 
秋はくれ君は都へかへりなば あはれなるべき旅のそらかな(山家集 下雑)
君ををきて立いづる空の露けさは 秋さへくるゝ旅の悲しさ(同 大宮の女房加賀)
 
露おきしにはの小萩もかれにけり いづち都に秋とまるらん(山家集 下雑)
慕ふ秋は露もとまらぬ都へと などていそぎし舟出なるらん(同 おなじ人)
 
さむき夜はむかふうちにも埋火の をきつることぞ思ひやらるゝ(宗長手記)
 
△河・瀬・岸
世のなかは何かつねなるあすかゞは 昨日の淵ぞ今日は瀬になる
                       (古今和歌集 十八雑 読人しらず)
 
明日香川七瀬ナナセのよどに住む鳥も こゝろあればこそ波立たゝざらめ
                               (萬葉集 七雑歌)
 
住の江のきしによる浪よるさへや 夢の通ひぢ人めよくらむ
                   (古今和歌集 十二恋 藤原としゆきの朝臣)
我みてもひさしく成りぬ住の江の 岸のひめ松いくよへぬらむ
                            (同 十六雑 読人しらず)
△汀ミギハ
雨ふるとふく松かぜはきこゆれど 池のみぎはゝまさらざりけり
                         (拾遺和歌集 八雑 つらゆき)
 
ゆく人もとまるも袖の涙川 汀のみこそぬれまさりけれ(土佐日記)
 
△湖ミヅウミ
水うみに秋の山辺をうつしては はたばりひろき錦とぞ見る
                         (拾遺和歌集 三秋 法橋観教)
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