33 林を詠める和歌
参考:吉川弘文館発行「古事類苑」
△林 名林
昔わがをりし桂のかひもなし つきの林のめしにいらねば
(拾遺和歌集 八雑 藤原後生)
木のもとにをらぬ錦のつもれるは 雲の林のもみぢなりけり
(後撰和歌集 七秋 読人しらず)
此世をば雲のはやしにかどでして 煙とならぬ夕をぞまつ
(千載和歌集 十七雑 良暹法師)
さがのなるときはばやしのなのみして うつろふいろに秋風ぞ吹
(夫木和歌抄 二十二林 前大納言実冬卿)
あらたまのきべのはやしになをたてゝ ゆきかつましもいをさきだたに(萬葉集 十四)
え林にやどるしゝやも求めよき 白妙の袖まき上げてしゝまつ我がせ(同 七旋頭歌)
△杣ソマ
なけやなけ蓬が杣のきりぎりす 過ゆく秋はげにぞかなしき
ひたはえて鳥だにすへぬ杣むぎに しらつきぬべきこゝちこそすれ(以上 松屋叢話)
宮材ミヤキ引く泉のそまに立つ民の やむときも無く恋ひ渡るかも
(萬葉集 十一古今相聞往来歌)
△森
ねぎごとをさのみきゝけんやしろこそ はてはなげきのもりとなるらめ(新野問答)
山科ヤマシナの石田イハタの社モリにふみ越えば けだし吾妹ワギモにたゞにあはむかも
(萬葉集 九雑歌)
山しろのいはたのもりのいはずとも 心の中をてらせ月かげ
(詞花和歌集 九雑 藤原輔尹朝臣)
おほあらきのもりのした草おいぬれば こまもすさめずかる人もなし
(古今和歌集 十七雑 よみ人しらず)
はぐゝみし梢さびしく成ぬらん 柞ハハソの杜のちり行みれば(永久四年百首 俊頼)
おもはぬを思ふといはゞ大野オホヌなる 三笠の杜の神し知らさむ(萬葉集 四相聞)
神カミなびのいはせの杜の喚子鳥ヨブコドリ いたくな鳴きそ吾が恋ひまさる
(同 八春雑歌)
立田川たちなば君がなをおしみ いはせの杜のいはじとぞ思ふ
(後撰和歌集 十四恋 元方)
うつろはでしばししのだの森を見よ かへりもぞするくずのうら風
(和泉式部集 二 赤染衛門)
偽をたゞすの森のゆふだすき かけつゝちかへわれをおもはゞ
(新古今和歌集 十三恋 平定文)
心をばいくたのもりにかくれども こひしきにこそしぬべかりけれ
(後拾遺和歌集 十三恋 よみ人しらず)
いかなればゆるぎの杜のむら鷺の けさしもことに立さはぐらん
(新千載和歌集 十八雑 入道二品親王覚性)
おもはぬをおもふと云はゞ真鳥マトリ住む うなでの杜の神ししるらむ
(萬葉集 十二古今相聞往来歌)
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