28 重陽などを詠める和歌
参考:吉川弘文館発行「古事類苑」
△重陽
きくもみぢ折しくひ魚を取そへて けふたまふなるみきのさかづき
(年中行事歌合 内大臣)
祝ひおく世を長月の袖の上に ちらぬ花田の色を見るかな(幕朝年中行事歌合 中)
数しらず君がよはひをのばへつゝ なたゝる宿のつゆとならなん
露だにもなたゝるやどの菊なれば 花のあるじやいくよなるらん(以上 伊勢集 下)
花の香をけさはいかにぞ君の為 まゆひろげたる菊の上の露(忠見集)
菊の露分るばかりに袖ぬれて 花のあるじにちよは譲らん(紫式部日記)
九重やけふ九日の菊なれば 心のまゝに咲せてぞみる(弁内侍日記 上)
△玄猪イノコ
神無月しぐれの雨のあしごとに わがおもふ事かなへつくつく(塩尻 九十)
秋をおきて時こそあれと咲花の 鏡はけふのもちいなりけり(幕朝年中行事歌合 中)
わたつ海のうきたる島をおふよりは うごきなき世をいたゞけや亀(源順集)
なによりも心にぞつくゐのこもち びんぐうすなる物とおもへば
(古今著聞集 十八飲食)
△追儺オニヤラヒ・ツイナ
いまはたゞ一夜になりてあしのやの いるがごとくにとしぞくれぬる
(年中行事歌合 内大臣)
鬼すらも都の内とみのかさを ぬぎてやこよひ人にみゆらん(躬恒集 下)
百敷の大宮人もきゝつぎて 鬼おふほどに夜は成にけり(新撰六帖 一)
ふる年といふなをやらふをとたかみ 春をいとふと人やきくらん
(夫木和歌抄 十八歳暮 宣旨)
△節分
冬と春と行かふ道の誰かれも 迷はでのぼるとのゝうちかな(幕朝年中行事歌合 中)
福は内へいり豆の今夜もてなしに 拾ひ拾ひや鬼は出らん(宗長手記)
かぞふれば我八十の雑事銭 やくとていかゞおとしやるべき(同)
△歳暮
あら玉の年のをはりになるごとに 雪もわがみもふりまさりつゝ
(古今和歌集 六冬 在原もとかた)
おさまれる世をこそ祝へ花もみぢ なれにし年のゆくにつけても
(幕朝年中行事歌合 中)
ゆく年とともにつもれる塵なれば はらひ捨てや春を待たまし(同)
△豊凶
新アタラシキ年のはじめに豊トヨのとし しるすとならし雪のふれるは(萬葉集 十七)
年もよしこがひもえたりおほくにの 里たのもしくおもほゆるかな
(拾遺和歌集 十神楽歌 かねもり)
いざ子等うゑな憂ひそ常しへに 松の栄ゆる御世にし有れば(気吹舎歌集)
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