26 上巳などを詠める和歌
 
                       参考:吉川弘文館発行「古事類苑」
 
△上巳ジャウシ
君をまづ祝ふ心のいそがれて おのがみの日のはらひをもせず(幕朝年中行事歌合 上)
 
△曲水宴
漢人カラヒトもふちを浮かべて遊ぶてふ 今日ぞわがせこ花かづらせよ(萬葉集 十九)
 
書とめしはの字に波や結ぶらん 絶にし道をとをりはてねば
あはれともけふこそ桃の花ざかり かみのみのひと誰さだめけん
                   (以上 夫木和歌抄 五三月三日 慈鎮和尚)
 
△雛遊
樟脳の匂ひもまだき箱入りの むすめのごとしけふの初雛(四方のあか 下)
 
△更衣コロモガヘ
今朝よりは夏にあはせのころもがへ 是もあづまの手ぶりなりけり
                            (幕朝年中行事歌合 上)
 
咲菊の花の籬のきせわたを 人のうへにもけふやかさねむ(同/九月)
 
たちかへて露ものこらぬころもでを いまはたぬらすはつしぐれかな
                        (年中行事歌合/十月 為邦朝臣)
 
△潅仏
わが君の御代やさかへん祈世も おほわの神の祭なりせば(年中行事歌合 宗信法眼)
 
咲そめし卯月のけふをかぞふれば さかり久しき法の花ぶさ(同 新中納言)
 
△端午
御園生の竹のこのよも幾千はた かぶとの花にとりそへて見む(幕朝年中行事歌合 中)
 
△同 薬猟クスリガリ
いと古きなあにの君は 中略 八重だたみ へぐりの山に 四月ウヅキと 五月サツキのほど
に 薬猟カスリカリ つかふる時に 下略(萬葉集 十六)
 
かきつばた衣キヌにすりつけますらをの きそひかりする月はきにけり(同 十七)
 
△同 薬玉クスダマ
くすりびのたもとにむすぶあやめ草 たまつくりえにひけばなるべし
                      (夫木和歌抄 七五月五日 恵慶法師)
 
声たてゝなくといふとも郭公 たもとはぬれじそらねなりけり
                     (拾遺和歌集 十六雑春 よみ人しらず)
 
ひだりにやたもとのたまも結ぶらん 右はあやめのねこそあさけれ(赤染衛門集)
 
そこふかくひけどたえせぬあやめ草 千とせをまつのねにやくらべん
年ごとのあやめのねにもひきかへて こはたぐひなのながきためしや
                         (以上 栄花物語 十二玉村菊)
 
この比をおもひいづればあやめ草 なかるゝおなじねにやともみよ
いにしへをかくるたもとは見るからに いとゞあやめのねこそしげけれ
                         (以上 栄花物語 十四あさ緑)
 
あやめ草泪の玉にぬきかへて をりならぬねを猶ぞかけつる
                         (千載和歌集 九哀傷 弁乳母)
 
玉ぬきしあやめの草はありながら よどのはあれむ物とやは見し(同 江侍従)
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