21c 歳時を詠める和歌
△夜
おもひつゝをれば苦しもぬばたまの 夜にしならば吾こそゆかめ
(萬葉集 十二古今相聞往来歌類)
我やどの梅の初花ひるは雪 夜るは月かとみえまがふ哉
(後撰和歌集 一春 よみ人しらず)
今夜コノヨラの早くあくればすべをなみ 秋の百夜モモヨを願ひつるかも(萬葉集 四相聞)
夏の夜のふすかとすれば郭公 鳴一こゑにあくるしのゝめ
(古今和歌集 三夏 きのつらゆき)
夏のよはまだ宵ながらあけぬるを 雲のいづこに月やどるらん(同 ふかやぶ)
おもへどもおもひもかねつあしびきの 山鳥の尾のながきこの夜を
(萬葉集 十一古今相聞往来歌類)
蛬キリギリスいたくななきそ秋の夜の ながき思ひは我ぞまされる
(古今和歌集 四秋 藤原たゞふさ)
あかねさすひるはこちたしあぢさひの 花のよひらに相見てし哉
(倭訓栞 前編三十六与)
よひにあひて朝アシタおもなみなばりにか けながき妹がいほりせりけむ
(萬葉集 一雑歌)
奥山に住むちふ男鹿シカの初夜ヨヒさらず 妻問ふはぎの散らまく惜しも(同 十秋雑歌)
人しれぬわがかよひぢのせきもりは よひよひごとにうちもねななむ(伊勢物語 上)
はなはだもよふけてなゆき道辺ミチノベの ゆざゝがうへに霜の降る夜を
(萬葉集 十冬相聞)
さ夜中に友よぶ千鳥ものおもふと わびをる時に鳴きつゝもとな(同 四相聞)
恋しねとするわざならしむば玉の よるはすがらに夢に見えつゝ
(古今和歌集 十一恋 よみ人しらず)
から衣きてかへりにしさよすがら 哀とおもふをうらむらんはた
(後撰和歌集 九恋 桂のみこ)
契りけんほどやすぎぬといそぐらん よるもすがらにかへる雁がね
(左京大夫顕輔卿集)
[次へ進む] [バック]