21a 歳時を詠める和歌
 
△日
ちかくあらば いまふつかだみ とほくあらば なぬかのうちは すぎめやも きなむ
わがせこ 下略(萬葉集 十七)
 
春雨に衣はいたくとほらめや 七日ナヌカしふらば七夜ナナヨ来じとや(同 十春相聞)
 
なぬかゆくはまのまさごをかずにして こゝぬかさへもかずへつる哉(和泉式部集 三)
 
かすがのゝとぶひののもり出て見よ いまいくか有て若なつみてん
                       (古今和歌集 一春 よみ人しらず)
 
昨日といひけふとくらしてあすか川 ながれてはやき月日成けり
                         (同 六冬 はるみちのつらき)
 
わかれにし月日やなにの隔にて きのふは人のむかしなるらん(倭訓栞 前編七幾)
 
つゐにゆく道とはかねて聞しかど きのふけふとは思はざりしを(伊勢物語 下)
 
前日ヲトツヒも昨日も今日も見つれども 明日さへ見まくほしき君かも(萬葉集 六雑歌)
 
あしがもの すだくふるえに をとつひも きのふもありつ 下略(萬葉集 十七)
 
梓弓をして春雨けふふりぬ あすさへふらばわかなつみてん
                       (古今和歌集 一春 よみ人しらず)
 
ぬばたまの よる見し君を あくるあした あはずまにして いまぞやしき 中略
                                (萬葉集 十五)
 
月立ちてたゞ三日月の眉ねかき け長く恋し君にあへるかも(同 六雑歌)
 
ふじの嶺ネにふりをける雪は六月ミナヅキの 十五日モチにけぬればその夜ふりけり
                                 (同 三雑歌)
 
△時
しくしくにおもはず人はあらめども しばしも吾はわすらえぬかも(萬葉集 十三相聞)
 
夏野ナツヌゆく小牡鹿ヲジカの角ツヌの束間ツカノマも 妹が心を忘れてもへや(同 四相聞)
 
たまゆらにきのふの夕ユフベ見しものを けふの朝アシタに恋ふべきものか
                        (萬葉集 十一古今相聞往来歌類)
 
わくらばにとふ人あらばすまの浦に みしほたれつゝわぶとこたへよ
                      (古今和歌集 十八雑 在原行平朝臣)
 
我みてもひさしく成ぬ住の江の 岸のひめ松いくよへぬらん
                          (同 十七雑 よみ人知らず)
 
夕卜ユフケにも占ウラにものれる今夜コヨヒだに 来まさぬ君を何時とか待たむ
                        (萬葉集 十一古今相聞往来歌類)
 
河上カハノヘのいつもの花の何時も何時も 来ませ我が背子セコ時じけめやも(同 四相聞)
 
いつはとは時はわかねど秋のよぞ 物思ふことの限成ける
                        (古今和歌集 四秋 読人しらず)
 
立わかれいなばの山の嶺におふる 松としきかば今かへりこん(同 八離別)
 
しのづかのむまやむまやと待わびし 恋はむなしく成ぞしにける(大和物語 上)
 
今のみの行事ワザにはあらず古イニシヘの 人ぞまさりてなきさへなきし(萬葉集 四相聞)
 
古イニシヘもかく聞きつゝやしぬびけむ この古河の清き瀬の音トを(萬葉集 七雑歌)
 
行人はそのかみこんといふものを 心ぼそしやけふの別れは(大和物語 上)
 
こしかたをさながら夢になしつれば さむるうつゝのなきぞ悲しき
                     (新古今和歌集 十八雑 権中納言資実)
 
このごろに千歳やゆきも過ぎぬると 吾やしかもふ見まくほれかも(萬葉集 四相聞)
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