21 歳時を詠める和歌
参考:吉川弘文館発行「古事類苑」
△歳
あづさゆみ春たちしより年月の いるがごとくもおもほゆる哉
(古今和歌集 二春 みつね)
とゞめあへずむべもとしとはいはれけり しかもつれなくすぐる齢か(同 十七雑)
年のはに梅はさけども空蝉ウツセミの 世の人君し春なかりけり(萬葉集 十春雑歌)
年のはに来なくものゆゑほとゝぎす 聞けばしぬはくあはぬ日をおほみ(同 十九)
あらたまのとしのをながくあはざれど けしきこゝろをあがもはなくに(同 十五)
とゞめやば流れて早き年波の よどまぬ水はしがらみもなし
(新勅撰和歌集 六冬 入道二品親王道助)
年の内に春はきにけり一とせを こぞとはいはんことしとやいはん
(古今和歌集 一春 在原元方)
玉くしげふたとせあはぬ君が身を あけながらやはあらんと思ひし
(後撰和歌集 十五雑 源公忠朝臣)
あら玉の年の三とせを待わびて たゞこよひこそ新枕すれ(伊勢物語 上)
ひと日だにみねば恋しき君がいなば 年のよとせをいかですぐさん(躬恒集)
あらをらは妻子メコの産業ナリをばおもはずろ 年の八歳ヤトセを待ちどきまさず
(萬葉集 十六有由縁并雑歌)
今年ゆく新島守ニヒサキモリがあさごろも 肩のまよひは誰かとり見む(同 七雑歌)
去年コゾ咲きし久木ヒサキ今さくいたづらに 土にやおちむ見る人なしに(同 十春雑歌)
いかにねておくるあしたにいふことぞ 昨日をこぞとけふを今年と
(後拾遺和歌集 一春 小大君)
前年ヲトドシの先年サキツトシより今年まで 恋ふれどなぞも妹にあひがたき(萬葉集 四相聞)
いにし年ねこじてうへし我宿の わか木の梅は花さきにけり
(拾遺和歌集 十六雑春 中納言安陪広庭)
けふよりはいまこん年の昨日を ぞいつしかとのみ待わたるべき
(古今和歌集 四秋 みぶのたゞみね)
△月
むつきたちはるのきたらばかくしこそ うめををりつゝたぬしきをへめ
(萬葉集 五雑歌)
わぎもこが衣きさらぎ風寒み ありしにまさる心地かもする(曽禰好忠集)
桜花春くはゝれるとしだにも 人の心にあかれやはせぬ(古今和歌集 一春 伊勢)
はゝ子つむやよひの月になりぬれば ひらけぬらしなわがやどの桃(曽禰好忠集)
うの花のさくつきたちぬほととぎす きなきとよめよふゝみたりとも(萬葉集 十八)
五月サツキの花橘を君がため 珠にこそぬけおちまく惜しみ(同 八夏相聞)
さつきまつ山時鳥うちはぶき いまもなかなんこぞのふるこゑ
(古今和歌集 三夏 よみ人しらず)
九月ナガツキのそのはつ雁の使ひにも おもふ心は聞こえ来コぬかも(萬葉集 八秋相聞)
よるひるのかずはみそじにあまらぬを など長月といひはじめけむ
(拾遺和歌集 九雑 参議伊衡)
秋ふかみ恋する人のあかしかね 夜をなが月といふにやあるらん(同 みつね)
十月カミナヅキしぐれにあへる黄葉モミヂバの 吹かばなりなむ風のまにまに
(萬葉集 八秋相聞)
神無月時雨もいまだふらなくに かねてうつろふ神なびのもり
(古今和歌集 五秋 よみ人しらず)
十二月シハスには沫雪アワユキふると知らぬかも 梅の花さくふゝめらずして
(萬葉集 八冬雑)
△閏月
さくらばな春くはゝれるとしだにも 人の心にあかれやはせぬ
(古今和歌集 一春 伊勢)
うるひさへ有て行べき年だにも 春にかならず逢よしもがな
(古今和歌六帖 一歳時 つらゆき)
さみだれのつゞけるとしのながめには 物思ひあへる我ぞ侘しき
(後撰和歌集 四夏 よみ人しらず)
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