15 風を詠める和歌
参 考:吉川弘文館発行「古事類苑」
△風以方位為名
あまぎりあひひかた吹らしみづぐきの をかのみなみになみ立わたる(袖中抄 二十)
卯は山瀬辰だし巳うち午くだり 未わかさに申日方風
西真西戌はしも西亥たば風 北は真丑あひ寅は中の手(以上 烹雑の記 前集上)
天アマぎりあい日方ヒカタ吹くらし水茎ミヅグキの 崗の水門ミナトに波立ちわたる
(萬葉集 七雑歌)
春日野のはぎしちりなば朝風アサコチの 風にたぐひてこゝにちりこね(同 十雑歌)
いみづがは きよきかふちに いでたちて わがたちみれば あゆのかぜ いたくしふ
けば みなとには しらなみたかみ 中略(同 十七)
東風アユノカゼいたくふくらしなこのあまの つりするをふねこぎかくる見ゆ(同)
あをのうらによするしらなみいやましに たちしきよせくあゆをいたみかも(同 十八)
こちふかばにほひおこせよむめのはな あるじなしとて春なわすれそ
(大鏡 二 左大臣時平)
あなしふくせとの塩あひに舟出して はやくぞ過るさやかた山を
(後拾遺和歌集 九羇旅 右大弁通俊)
兼てしりぬあなしの風を思ふより 心つくしの波路なりとは(拾玉集 二)
△風以時節為名
浅茅生の露吹むすぶ木枯に みだれてもなくむしの声哉(源順集 但馬)
木枯の秋のはつ風ふかぬまに などか雲ゐにかりのおとせぬ(同)
我門のわさ田の稲もからなくに まだき吹ぬる木がらしの風(同)
山ざとはさびしかりけり木枯の 吹ゆふ暮のひぐらしのこゑ
(千載和歌集 五秋 藤原仲実朝臣)
△嵐
み吉野の山のあらしの寒けくに はたや今夜ヒヨヒも我れ独りねむ(萬葉集 一雑歌)
もゝしきのむかしのともをみにくれば あらしの風もにしきをぞしく
(空穂物語 嵯峨院)
吹からに秋の草木のしほるれば うべ山かぜをあらしといふらん
(古今和歌集 五秋 文屋やすひで)
△暴風
ありわぶる身のほどよりは野わきする 浅ちが原の露はのどけし
はやちふくしげみののらの草なれや おきてはみだるふせばかたよる(以上 相模集)
野分するのべのけしきを見渡せば 心なき人あらじとぞ思ふ
(千載和歌集 四秋 藤原季通朝臣)
波しらむ澳オキのはやてやつよからし 生田が磯によするともぶね
(夫木若抄 十九風 為家)
△微風
笛のねに神の心やたよるらん 森のこかぜもふきまさるなり(赤染衛門集)
△雑載
山のべの御井ミイを見がてり神風カムカゼの 伊勢の処女等ヲトメラあひ見つるかも
(萬葉集 一雑載)
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